『ロビン・ギブ・アーリー・ワークス・コレクション』-アンカット誌レビュー
イギリスの音楽誌Uncut(アンカット) 2015年7月号になかなか中身の濃い『救いの鐘~ロビン・ギブ・アーリー・ワークス・コレクション』評が掲載されました。プロジェクトのプロデューサーを務めたアンドルー・サンドヴァルのショート・インタビューも掲載されていますが、こちらも濃い内容ですので、以下に抜粋をご紹介します。 (背景が赤っぽくなっている箇所が記事からの引用です)
同レビューはまず60年代のビージーズを次のように、ずばりとかなり適切に紹介しています。
このグループはめっちゃ多作であった。まだ20歳にもならないギブ兄弟は2年間で4枚のアルバムを発表。その1枚はダブルアルバムである。
正確にいえば1946年生れのバリーは20代にはなっていましたが、ふたごのロビンとモーリスはこのいわゆる第一期黄金期には17~19歳。まさに、めっちゃ若いグループでした。
ディスク1に入ったロビンの1枚目のソロアルバム『救いの鐘(Robin’s Reign)』については―
『Robin’s Reign』の魅力は、歌詞の面でもメロディの面でも、その独特な個性に尽きる。ビージーズは、ポップスの職人であると同時に、ひそかに、しかしきっちりと、実験的なバンドとしての側面も持っていた….
このビージーズの側面はあまり語られることがないように思いますが、非常に同感です。ヒットを連発したために、王道ポップスを好む層に愛好されたせいもあってか、かなり安全パイのバンドのように見られがちですが、実はこんなに変わったバンドもあまりなかったのではないでしょうか。
ディスク2に収められたロビンの「幻の2枚目のアルバム」、『シング・スローリー・シスターズ』については、こう賛辞が寄せられています。
これほど強力なアルバムが、これほど長いあいだ陽の目を見ずに来たというのは驚くべきことである。これはロビンの傑作だと言って良いだろう。『Robin’s Reign』よりもはるかに豊かな内容だ。 … 華麗であると同時に、どの曲からも圧倒的に感じられるのは、耐えがたいまでの悲しみである。
注目作のひとつ、延々12分におよびミニ叙事詩「ハドソンズ・フォールン・ウィンド」について―
この曲はロビンがシド・バレットやアーサー・リーに比肩する存在だったことを示している。
最後にこのセットの歴史的意義が、次のように簡潔にまとめられています。
この3枚組セットが出たのは、世のため、人のためになるばかりでなく、 ロビン・ギブが経験した、破格でインスピレーションに満ちた自由な2年間を思い出すよすがともなってくれる。その後、ビージーズは再結成され、誰も予期しなかった、世界規模の第二期黄金時代が始まるわけだ。
10点満点中の9点という高評価でした。
また、レビューに付属するジョン・デールによるインタビューの中で、アンドルー・サンドヴァルが、「10年を要したこのプロジェクトの中で一番興奮した瞬間」は、「エヴリシング・イズ・ハウ・ユー・シー・ミー」や、幻だったロビンの”スクルージ”プロジェクトからの「ゴースト・オブ・クリスマス・パスト」、それに「ハドソンズ・フォールン・ウィンド」などの音源が見つかった時だと回答しています。なんと「エヴリシング・イズ・ハウ・ユー・シー・ミー」はもともとセッションを録音してあったリールが紛失した結果、「4トラックに入っていた」り、「ゴースト・オブ・クリスマス・パスト」にいたっては、「ロビンが自宅に持ち帰って上にデモを入れてしまったオープンリール・テープに入っていた」そうなんです!
幸い、最後になっていろいろな音源が出てきたということもあり、サンドヴァル自身は、こんな希望が持てる予想を述べています。
今回のリリースに続いて、この時期のロビンのレコーディング音源がファンの間からもっと出てくるんじゃないか という気がしています。
「ロビンもきっと誇らしく思ってくれたはず」というサンドヴァルは、このコレクションがこれほど長いあいだ未発表状態だったのは、
ギブ兄弟は曲に不足するという状態には無縁でしたからね。ロビンが生きている間には、特定の時代の作品にスポットを当てるのは難しかった。また、特にロビンのソロ作品は、ロビンがアーティストとして単独で飛び出したという、家族にとっては苦しい時代の産物だった、ということもあります。
サンドヴァルのまとめの言葉には共感する人も多いでしょう。
こうしてロビンの作品を単独で聴いてみると、初めて、ロビンがビージーズに何をもたらしていたのかが本当に見えてきます。
グループの中での個々の役割というのは、まだ不明な部分が大きいので、確かにそうした面からも今回のリリースの価値は大きいと言えます。
アンカット誌2015年7月号のデジタル版は同誌のサイトからも購入可能です。(追記:新しい号が出たためにレヴュー全体もこちらで読めるようになりました)
(Thanks also: Yamachan)
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