バリー・ギブinブリスベーン(2月16日)

バリー・ギブのミソロジー・ツアーは2月27日のシドニー公演(追加公演)で大好評のうちに終了。バリー一行は無事に帰路についたということです。個人的な事情で更新が追い付かなくて申しわけないのですが、今日は12日のメルボルンに続いてビージーズ誕生の地ともいえる”故郷”ブリスベーンで行われた2回の公演のうち、初日にあたった2月16日のコンサートのレビューをtheage.com.au(オンライン版2013年2月17日版)からご紹介します。

 

 

バリー・ギブのコンサートは”ファミリー・アフェア”

父が持っていたアナログレコードのビートに合わせてブリスベーン郊外の自宅で裸足でリズムをとっていたころ、わたしは8歳だった。家では『サタデー・ナイト・フィーバー』がいつもかかっていて、ギブ兄弟のハーモニーはわたしの父の青春の、そして同時にわたしの成長の、欠かせない1ページだった。

わたしの家族の思い出があの音楽と切り離せないように、レッドクリフ半島出身の三兄弟の思い出も音楽と共にある。この土曜日(2月16日)に三兄弟の最後のひとりとなった長兄のバリー・ギブがその思い出をわかちあうためにブリスベーンに帰ってきた。

冒頭からいきなり編集されたホームムービーが流れて、これは家族の物語になるのだな、ある種の追悼イベントなのだな、と感じられる。そんな意味で会場となったブリスベーン・エンターテイメント・センターもいつになくパーソナルな空間に感じられた。

コンサート自体は思いと愛情がこもっていると同時に意外な喜びに満ちたものでもあった。

ブリスベーンに戻ってきた”放蕩息子”は盛大な拍手と歓声で迎えられ、コンサートは始まった。真っ青なエレクトリック・ギターを手に、「Jive Talkin’」でファルセットが響き渡る。「Lonely Days」「You Should Be Dancing」と続き、気がつけばまた足でリズムをとっているわたしがいる。

昔よりややハスキーとはいえ、ファルセットの高音部も楽々と聞かせるバリー。モーリスとロビンはいないけれど、家族の絆はあいかわらずだ。「みなさん、サミー・ギブです」とバリーの紹介を受けてモーリスの愛娘、バリーの姪であるサマンサが登場。バリーとのデュエット「How Can You Mend A Broken Heart」ではそのしっとりした歌声が歌詞をさらに深く聴かせる。続いて「息子のスティーブンです」とバリーが紹介するので右手を見ると、入れ墨姿のごつい髭のギタリストの姿が。モーリスの「On Time」を披露するが、渋いボーカルはむしろヘビメタ系の印象だ。バリーと組んでの「獄中の手紙」はパワフルで感動的だ。このラブソングはロビンが思いついたのだという。あるときレコーディングスタジオに入ってきながら、「すごい歌のアイディアがあるんだ。人を殺して死刑判決を受けた男の物語だよ」と言ったのだそうだ。スティーブンのボーカルはあまりに説得力たっぷりなので、ひょっとしてほんとに死刑囚だったんじゃあるまいかと思えてくるほどである。「スピックス&スペックス」では観客が一体となって拍手する。「ワーズ」では聞き手も一緒に歌って、最後はバリーのお株を奪うほどだ。「さあ、今度はぼくが歌う番だ」とバリーは言うのだが、観客も歌い止めようとしない。シンプルで真実にあふれた歌詞の力だ。「今度こそ、ぼく」と言いながらバリーも笑ってしまう。

「ジョーク」では最初の一節のあとに聞きなれた声が響き渡る。今度は誰が歌っているのだろうとステージを見やると、バリーが中央のマイクから退いて巨大なアリーナで歌うビデオ画面のロビンに主役の座を明け渡す。誰もの目に涙が宿る瞬間だ。

ブリスベーンへの”帰郷”は「胸を打つ大きな」体験だったとバリーは語る。数日前にレッドクリフでブリスベーンの街が愛する三兄弟をたたえる像の除幕式が行われたばかりだ。

干潟で裸足で遊んだこと、潮が引いたあとに船が残されていたこと、桟橋から海に飛び込んで通行人が落とした小銭を拾おうとしたこと。バリーの思い出話が続く。「あのころが兄弟として一番心が通じていた時代だった」

「お帰りなさい、バリー」 客席から声が飛ぶ。

バリーが語るモーリスは「新しい道具好き」。「何か新しい道具が出ると買わずにはいられないタイプ」

ロビンは「信じられないぐらいおかしいのに、信じられないぐらい悲しい」。だからこそ「あんな曲が書けたのでしょう」

末っ子のアンディは短い間ではあったけれどポップスターになりたいという夢をかなえて去っていった。

こうして「Ordinary People」が始まる。二世代のギブ・ファミリーの最後の曲は「Immortality」。そしてまたわたしも8歳のころのように父と一緒に踊り狂っていた。いつかわたしの子どもたちにもあの古いドーナツ盤を聞かせてやりたいなあと思いながら。

ブリスベーンは「すべてが始まった場所」。とても特別な場所であったようです。その特別な場所で行われた特別なコンサートのレビュー、スティーブンが「獄中の手紙」を説得力を持って歌えるのはひょっとして実体験に基づいているんじゃないか(死刑囚だったんじゃないか)というのには笑ってしまいました。

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