バリー・ギブin メルボルン (2月13日)
by アマデウス · 2013/02/17
バリー・ギブのオーストラリア公演は大成功のうちに進行。とうとうギブ兄弟が育った”故郷”であるブリスベーンに到達して、14日は彼らが通った小学校などがある地元のレッドクリフで少年ビージーズ像の除幕式が行われました。これについてはまた詳しくご報告することにして、まず順番通りにシドニー(8日)に続くメルボルン公演(2月12日)のレビューをお届けします。take40.comに掲載された記事の内容をまとめたものです。
「ぼくは小鳥だ 風にのって流れる姿を見てくれ…」
まさか「キルバーン・タワーズ」がライブで聞けるなんて。1968年にシングルのB面として発表された曲である。アリーナを埋めた満員の聴衆を前にバリーはオープンDにチューニングしたギターを爪弾いてこのさびしい酒飲みの歌をうたう。「いいぞう、バリー!」と大向うから声がかかる。お帰り、バリー、というわけだ。「あいかわらず素敵よー、バリー!」という声も。
ロッド・レーバー・アリーナで見たうちでもっとも親密な雰囲気のショーだった。バリーは15,000を超える聴衆とのかけあいを存分に楽しみ、おなじみのビッグヒットだけでなく、意外な曲も披露してくれた。1968年の『ホリゾンタル』からは「With The Sun In My Eyes」。オーストラリア時代のアルバムからは「Play Down」がプロデューサーのオジー・バーンに捧げられた。メロトロンとグレゴリオ聖歌式の詠唱が響き渡る「Every Christian Lion Hearted Man Will Show You」もすごい。バンドのメンバーは1967年のロンドンのサウンドと雰囲気を楽しんで再生している。
多彩な顔ぶれのバンドの中でも異色なのがリードギタリストで、入れ墨はしてるは、髭は生やしてるは。こ、これは誰?と思っていると、「息子のスティーブンをご紹介します」。えっ? どんなやつやねん、と思ってきょろきょろしていると、バリーのご子息はあの入れ墨君なのであった。外見通りの迫力でモーリスの「オン・タイム」を熱唱。「獄中の手紙」のボーカルも渋かった。
モーリスとロビンがいなくてもやっぱりギブ・ファミリーだ。モーリスの愛娘サマンサが登場、スキータ・デイビスの「ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド」に続いてバリーとのデュエットで「傷心の日々」を披露。「イン・ザ・モーニング」も一緒に歌っていた。この曲はバリーのMCによるとワガワガで書いたものだそうだ。オーストラリアでレコーディングされたオリジナルバージョンはよりスローなアレンジで再録されてジャック・ワイルド主演の映画『小さな恋のメロディ』のオープニングシーンに使われた。
「スピックス&スペックス」にいたって会場は一体に。みんなピアノに合わせて足踏みする。この曲がこんなにウケるのもオーストラリアならではだろう。ビージーズをオーストラリアでスターにした曲であり、今でもビージーズをオーストラリアと結びつける曲である。「ワーズ」では観客に先を越されてなかなかバリーがフィニッシュできない。「今度はぼくが歌う番だってば」というのに観客が先に歌ってしまう。愉快で客席との密着感があるやりとりが繰り広げられた。
なんでまるで自分のための音楽みたいな気がしてしまうんだろう。考えてみると私がこういう音楽を聴き始めたのは1978年、ビージーズがグラミー賞を総なめし、世界に君臨した年だった。6歳だった私は母がエアロビのBGM用に買ってきた二枚組の『The Bee Gees Greatest』 を繰り返し聴いたものだ。A面がすごかった。「Jive Talkin」「Night Fever」「Tragedy」「You Should Be Dancing」、そして「Stayin’ Alive」。聴衆の反応を見ていると、みんな似たような体験をしてきたことがわかる。誰もが自分だけのギブ兄弟体験をしてきた。誰もが自分だけのビージーズ物語を持っているのである。
バリーが「ジョーク」を歌い始めたとき、ちょうど下を向いてメモをとっていたら、ふと声が変わった。今度は誰が歌っているのだろうと暗いステージに目をやったが、誰だかわからない。そして気づいた。ロビンだ。スクリーンでロビンが歌っている。素晴らしい。
そんな夜だった。愛情があふれ、思いに満ち、うれしい驚きのある、そんな夜だった。同時にこれはバリーのさよなら公演ではないかという気もした。もしそうなら、これ以上はない最高のさよならだった。
Review by Christopher Hollow
セットリスト
Jive Talkin’
Lonely Days
You Should Be Dancing
First of May
To Love Somebody
How Can You Mend a Broken Heart?
Fever / Stayin’ Alive
How Deep Is Your Love?
On Time
The Long and Winding Road
I’ve Gotta Get a Message to You
Kilburn Towers
Playdown
Spicks and Specks
With the Sun in My Eyes
In the Morning
Every Christian Lion Hearted Man Will Show You
I Started a Joke
Islands in the Stream
Guilty
Words
If I Can’t Have You
Night Fever/More Than A Woman
Ordinary Lives
Immortality
アンコール:
Stayin’ Alive
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