【2020年7月】「愛はきらめきの中に」ストーリー

70年代後期のビー・ジーズの代表的バラードを語る(画像はSmoothradio.comの記事より)

smoothradio.comが70年代後期、フィーバー時代のビー・ジーズを代表するバラード「愛はきらめきの中に(How Deep Is Your Love)」を同サイトの「ストーリー・オブ…」コラムで取り上げました(The Story of ‘How Deep Is You Love’ by the Bee Gees -  2020年7月9日付)。このコラムは名曲を取り上げ、その背景を紹介する内容で、これまでにもオーティス・レディングの「ドック・オブ・ベイ」、10CCの「アイム・ナット・イン・ラヴ」などが取り上げられています。以下にこの記事をざっとまとめてご紹介します。

ビー・ジーズはポップス史に残る数々の名作を発表してきたが、1970年代後半、ディスコ・カムバック期の絶頂に発表した大ヒット・ラヴソングが「愛はきらめきの中に(How Deep Is Your Love)」だ。

その後、テイク・ザットがカバーしてチャート・ナンバー・ワンのヒットにもなったこのギブ兄弟のクラシックは、彼らのもっとも愛されている曲のひとつである。

ところでこの曲の発想のきっかけになったのは何なのか、この曲を書いたのは誰なのか。ここに事実をまとめてみる。

「愛はきらめきの中に」の作者は誰?

ビー・ジーズの曲のほとんどがそうであるように、この曲もバリー、ロビン、モーリスのギブ兄弟の作だ。バリーがキーボード奏者のブルー・ウィーヴァ―(ウィーヴァ―は作者として正式にクレジットはされていない)と共にメロディを書いた。

コ・プロデューサーのアルビー・ガルーテンは、後にウィーヴァ―の果たした役割が大きかったと語っている。「この曲はブルー(ウィーヴァ―)のインプットが非常に大きかった。彼という人間が大きく影響している。大きく、というのは作曲という面についてではないのだが。もっともピアノを弾いているというのは、曲を書くというのと同じだけどね。あの曲のピアノの構成にはブルーの影響がとても大きい」

プロデューサーのロバート・スティグウッドから製作中の映画のための曲の提供を依頼されたビー・ジーズは、後に『サタデー・ナイト・フィーバー』となる映画のために5曲を提供した。そのひとつがこの「愛はきらめきの中に」である。

発想のもとになったのは?

ギブ兄弟は、この曲が特定のラブストーリーをもとに発想されたとは一度も言っていない。

バリー自身はこんな風に言ったことがある。「曲の中で聞けるいろいろなニュアンスは後で付け加えたものです。とはいっても、歌詞は変えていません。ただ構成の点でいうと、書くときと、レコーディングするときはちょっとやり方を変えているんです。ちょっと改善された、と思います。ぼくたちは『How Deep Is Your Love(君の愛はどのぐらい深い?)』というタイトルには、いろいろな意味合いが含まれているので完璧だと思ったんですよね」

もともとはビー・ジーズが歌う予定ではなかった

ビー・ジーズは、もともとこの曲をアメリカの歌手イヴォンヌ・エリマンのために書いた。だがロバート・スティグウッドが、映画のサントラではビー・ジーズ自身が歌うべきだと主張。最終的にエリマンはサントラではやはりビー・ジーズ作の「アイ・キャント・ハヴ・ユー」を歌い、全米ナンバーワンに送り込んでいる。

チャートでの成績は?

この曲が全英チャートで3位になったときに、バリーは「イギリスでトップ5に入るヒットを出せると本当にうれしい」と語った。

「ニューウェーブ、パンクロックの全盛期に、『愛はきらめきの中に』みたいな曲は無理なんじゃないか、と思ってしまいそうになる。でもぼくたちは前を向いて進み続け、日ごとに力をつけている」

この曲は全米をはじめ各国でナンバーワン・ヒットとなっている。

著作権法にも影響を及ぼした「愛はきらめきの中に」

ビー・ジーズはこの曲について剽窃で訴えられている。訴えたのはRonald Selle氏。彼が1975年に書いた曲「Let It End」を模倣されたというのが訴えの内容。

判決が下ったのは1983年。ビー・ジーズは「そんな曲は聞いたことがない」と主張し、彼らがその曲を聞いたという証拠も提示されなかった。「Let It End」は未発表曲で、Selle自身が自宅でレコーディングしたものを音楽出版社に送っただけだったのである。

このケースは曲の類似性に関するものだったので、Selle側の証人として熟練した音楽学者のアラン・パーソンズが譜面の技術的な分析をもとに陪審を説得、陪審は「ビー・ジーズが曲を模倣した」という評決を下した。

ところが裁判官はこの評決を無視。Selle氏は後に上告して、再度退けられている。

この事件は陪審が音楽的な判断を下すことの難しさを示しており、曲同士が「驚くべき類似性」を示しても剽窃の証拠にはならないという画期的な判決を生んだ。

以降、曲を書く人間は、相手がその曲を聞いたことがあると証明できなければ裁判を成立させることができなくなった。その結果、多くの音楽出版社やソングライターたちが持ち込まれた曲を聴きたがらないという状況が生まれもしたのである。

カバーしたアーティスト

1996年にテイク・ザットがこの曲のカバーを発表し、全英チャート首位に輝く。2006年のカムバックまでの間、この曲が彼らの最終シングルとなった。

後にゲイリー・バーロウはこう語った。「これだけキャリアを積んだ段階でもまだカバー・バージョンに挑戦して、うまく歌えるということを証明したかった」

テイク・ザットが2018年に発表したコンピレーション・アルバム『オデッセイ~グレーテスト・ヒッツ』では「愛はきらめきの中に』のリメイク・バージョンにバリーが参加している。

このほか、ルーサー・ヴァンドロスジョニー・マティスバード・アンド・ザ・ビーリア・ミシェル(『グリー』)等のカバーもある。

元記事中にはSelle作の「Let It End」のリンク(こちら)も貼られています。この訴訟のことはわりと知られていますが、まだ問題の曲を聞いたことがないという方もいらっしゃるかと思うので、もし関心があればどうぞ聞いてみてください。

音符の数もコードの数も限られている中で偶然似ることはあるだろう、と言われています。特に似ている曲が発表されていてそれなりに知られている場合には、「意図的ではなくても、無意識のうちに昔聞いたメロディを使ってしまった」という意味で有罪になることがあります。あまり詳しくはないのですが、ジョージ・ハリソンの「マイ・スイート・ロード」が先行曲に似すぎていたということで有罪になったのは、たしかこのケースだったと記憶しています。

今回このことについてコメントしているのは、実はわりと最近出た日本の曲がこの「愛はきらめきの中に」に似ているという声をちらほら耳にするからです。それについては近いうちにまた取り上げてみたいと思います。

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{Bee Gees Days}

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