【1977】スーパー・ロック・アワーズ誌モーリス・ギブ・インタビュー

Super Rock Awards誌記事(1977年)より
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アメリカの音楽誌『スーパー・ロック・アワーズ(Super Rock Awards)』に掲載されたモーリス・ギブの1977年のインタビュー。

以下に簡単にまとめてご紹介します。

ビー・ジーズは60年代からポップ・シーンで活躍してきたグループだが、彼らのキャリアは大きく二分できる。「ジョーク」に代表されるようなソフトで心地よいバラードと現在のブルー・アイド・ソウル系のダンス・ミュージックだ。ラジオからは、毎日、ビー・ジーズの曲が流れ、ギブ三兄弟は、当然ながら大成功している。最新のアメリカ・ツアー(訳注:1976年12月のチルドレン・オブ・ザ・ワールド・ツアー)ではニューヨーク公演の全収益をニューヨーク市警アスレチック・リーグに寄付するなど、ポップ・スターとしても珍しいほどチャリティに力を入れている。

先日、メンバーのひとりモーリス・ギブと話すことができた。モーリスはマイアミでタオル一枚の姿でくつろいでおり、こちらはニューヨーク市内からという電話インタビューだったが、とても楽しいやりとりになったことをご報告する。
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ROCK誌(以下R) まず、ニューアルバムの仮タイトルは?

モーリス(以下M) 今はジョン・トラボルタが撮影中の映画「サタデー・ナイト」用の音楽をレコーディング中。次に出すアルバムはライヴになるよ。

R この前のツアーの?

M そう、LAフォーラムのコンサートを録音した。なかなかいい感じだったので、ミキシングすることにした。二枚組にしようと決めたばかりだよ。

R シングルのタイトルは? 映画のサントラからもシングルを出す予定?

M うん、出すよ。でもまだどれにするか決めてない。たくさんあるんだよ。イヴォンヌ・エリマンが1曲歌うことになってる……それから、えーと、トラバレ…?

R タバレス?

M あ、そうそう、タバレスだ。タバレスも1曲。イヴォンヌが1曲。ぼくらは3曲。

R ディスコなの?

M うん、「ホット・フィーバー」「ステイング・アライヴ」は、そうだね。でも次のシングルは「ディープ・イン・ユア・ラヴ」になると思う。

R プロデューサーは?

M ぼくたち。

R ビー・ジーズといえばショーマンシップで知られているけれど、ツアーについての気持ちを聞かせて?

M ツアーは大好きだよ! ツアーをしちゃダメとか、ステージにあがっちゃダメとかいうことになったり、何かの事情でもうステージに立てなくなったりしたら、ぼくはショックだ。ステージに立つのは大好き。楽しいし、ぼくたちのレコードを買ってくれる人たちに楽しんでもらうことができるし。ステージに立てないなんてことになったら、ほんと、ひどいよ。もしぼくたちがスタジオ・オンリーのグループになって、コンサートをしなくなったら、ぼくはかなりへこむと思う。家とスタジオの間を往復するだけなんて、ぼくにはすごく退屈だ。実際に自分のレコードを買ってくれる人たちに会えないものね。

R ステージに立っているとパワーを感じる?

M いや、感じるのは達成感だね。レコードを買ってくれた人たちを喜ばせることができたっていう達成感。

R といっても、レコードとステージは別のメディアでしょ。ライヴのサウンドとレコードのサウンドを比べてどう思う?

M 優秀なサウンド・スタッフに恵まれているので、ぼくたちは、かなり近い音が出せていると思う。ぼくたち自身も、できるだけ良い形で、できるだけ良い音で、と努力している。そうしたいんだ。ぼくたちのプロデューサーであるカール・リチャードソンアルビー・ガルートンは、ときにはぼくたちと一緒にツアーに来ることもあるし、ツアーが始まる前にはサウンドをきちんと調整してくれる。だからぼくたちはレコード通りの音なんだ。実際、「口パクですか?」と聞かれたこともあるぐらいだ。ステージ効果もサウンドも、ライティングも何もかも、最高の状態にしようとがんばってる。ステージでは大音量では演奏しない。いつも音量をおさえて、バランスに気を配っている。ライヴアルバムを聞いたときは、自分たちでも信じられないぐらいだったよ。「こんな音なのかよ?」って他の人に聞いたぐらいだ。

R ビー・ジーズのキャリアには2つの時代があるけれど、現在のサウンドは気に入ってる?

M うん、初期よりずっと気に入ってるよ。バラードも良かった。ストリングスをふんだんに使っていたしね。だけど、もしずっとあれを続けていたら、進歩がなかったと思う。同じことの繰り返しになっちゃったと思うよ。

R お互いがいやになった?

M いやあ、ちがうよ。この曲ではだれがリードボーカルをとるとか、そういうことで言い争ったりとか、そういう面で、ぼくたちみんながちょっとは大人になったんだと思う。もう言い争うこともない。ときには意見があわないこともあるけれど、ふたりか、三人が、こうしようと言えば、いまは多数決でやってる。だから、もうほとんど言い争うことはない。言い争いになっても、すぐに終わるから、やかんを火にかけて、お茶にするね。

R 徹底的にやりあったりはしないの?

M 絶対に、ぜえったいに、手を出すところまではいかない。

R またツアーをする?

M 聞いてるところでは、次のツアーは来年のはじめかな。その前はなし。

R 今はどこに住んでいるの?

M 実はぼくはマン島に住んでる。アイリッシュ海にある小さな島なんだけど、実際にはマイアミでレコーディングしていることが多い。

R あとのふたりは?

M 同じ。ロビンだけはイギリスに住んでいるよ。

R ニューヨーク市警アスレチック・リーグとのことを教えて。

M ニューヨーク市からは、曲想を得たり、いろいろな意味でお世話になった街なので、何かしたかった。いろんな人に親切にしてもらったし、ぼくたちの方でもニューヨークに恩返ししたかった。アスレチック・リーグを選んだんじゃなくて、ニューヨークのために何かしたいなって思ったときに、ちょうど需要があったのがアスレチック・リーグだったんだよ。子どもたちが街をうろついて犯罪者予備軍にならないように、スポーツの喜びを教えて面倒をみるっていうのを、仕事にしている部局なんだ。ニューヨークは特に資金が必要だったので、ぼくたちは、「ツアー全体のコンサート1回分だし、ニューヨーク市に寄付しよう」って思った。それで市警のアスレチック・リーグを選んだ。

R 18ヶ月でヒット6曲というハイペース。好調の理由は?

M レコーディングだと思う。あ、この曲はイケる、と思ったのをシングルとして発表してる。売れるか売れないかだけが基準ではない。これはいいダンス・ナンバーだとか、そういう風には考えてない。自分たちにとって意味がある曲だけを発表している。兄弟3人とマネージャーの合わせて4人でじっくり時間をかけて、完成した曲を聴く。だいたいはロバート(スティグウッド)が正しい曲を選ぶ。ロバートがシングルを選ぶときには、いつも適確で適切な理由がある。

R 音楽面で、まだやっていないけれど、やってみたいということはある?

M やりたいことは全部いずれはやる、そういうやり方なんだ。ディスコ音楽も、やろうと思えば、ずっと前からやれたけど、幸い、当時はそういうのが求められていなかったからね。当時のぼくたちに求められていたのは、ソフトなバラードとオーケストラ。だから、そういう曲を発表していた。その後、「ジャイヴ・トーキン」を出したら、突然、今度はそういうものが求められるようになって、こちらもその路線で行くことにしたんだよ。

聴き手: ハンナ・スピッツァー Super Rock Awards誌

時期的には76年のツアーを終えて『サタデー・ナイト・フィーバー』の作業をしていたころ、『Here At Last(グレイテスト・ライヴ)』発表前の電話インタビューです。「ハウ・ディープ・イズ・ユア・ラヴ(愛はきらめきの中に)」が「ディープ・イン・ユア・ラブ」になっているのも、モーリスが言い間違えたか、まだタイトルが決まったいなかったか、あるいは(これもありえるかと思いますが)雑誌側が「イズ」を「イン」と聞き間違えたか、のどれかでしょう。「ナイト・フィーバー」も「ホット・フィーバー」ですが、「ナイト」と「ホット」を聴き間違えたり、言い間違えたりは、ちょっとないでしょうから、これはまだこの段階で決まっていなかったと思われます。つまりこれはまさに歴史の転換点のインタビューというところでしょうか。

インタビュアーは楽しい会話だったと書いていますが、全体の雰囲気はともかく、サウンドに関するやりとりなど、モーリスはかなりガードして建前で話している印象を受けます。姉妹誌の「Super Rock」誌は1976年のツアー中にニューヨークでビー・ジーズにインタビューをしています。おそらくそれからあまり時間をおかずに行われたインタビューだからでしょう、このツアーの時のニューヨーク公演関連チャリティについての会話に紙幅が割かれています。このあたりの子ども関連のチャリティが後にユニセフのイベントやシングル「失われた愛の世界」の印税をそのまま寄付するという活動につながっていきます。

トップの写真をはじめ、記事中に使用された写真は、すべて1976年12月のツアーの時のものです。(このツアーでは、珍しくロビンが髭をたくわえているのも話題でした)

{Bee Gees Days}

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