【2020年6月】新作を発表したヴィンス・メローニーのロング・インタビュー(その1)

JB しかもいきなり大成功でしたよね。「ニューヨーク炭鉱の悲劇」がヒットしただけでなく、それから1か月後ぐらいにはビー・ジーズのバラード風の面がより強く出た「ラヴ・サムバディ」を発表して います。

ヴィンス たしか、オーティス・レディングのためにあの曲を書いてくれとバリーがロバート・スティグウッドに頼まれたんだったと思います。オーティス・レディングがイギリス公演に来るとかいう話があったので。実はぼく、オーティス・レディングには実際に会う機会を得ました。ロンドンでよく通ってたクラブがあったんです。コリンやモーリスもよく行っていました。ロビンとバリーはあまりクラブに行ったりしなかったですね。とにかくその晩はオーティス・レディングも来ていて、一緒にいた人がぼくを紹介してくれたんです。で、ぼくは「ハロー、オーティス、お会いできてうれしいです」と言うことができました。良かったですよ~。ただ、オーティスは結局あの曲をレコーディングせずに終わり、ぼくたちがレコーディングして、今では古典のひとつになってますね。

JB ギブ兄弟からはどのぐらい指示が出たんですか? それとも彼らはあなたの演奏スタイルに任せてくれた?

ヴィンス そうですね、ギブ兄弟がコリンやぼくに「こうして欲しい」と指示するという感じではありませんでした。おっしゃる通り、全員が自分の感覚でプレイしていたんです。「こんなのはどうかな」「あんなのはどうかな」「ここ繰り返してみたらどうだろ」とか、そんなやりとりをしてました。どの曲でも全員が力を合わせたんです。誰かが指揮をとった曲なんていうのはありません。

7曲目 「ラヴ・サムバディ」(ビー・ジーズ)

JB アメリカ行きはどんな感じでしたか? 「獄中の手紙」がアメリカで1位になったんじゃありませんでしたっけ? (訳注 これは取材者の思い違いです。「獄中の手紙」はイギリスで彼らの2曲目のナンバーワンになりましたが全米ではビルボード誌8位、キャッシュボックス誌3位が最高位です) ビー・ジーズはエド・サリバン・ショーに出演しましたね。その1、2年前にはオーストラリアの肉屋の裏で演奏していたというのにね!

ヴィンス ほんとですよ。もう目が覚めるような体験でした。飛行機でアメリカ入りして大歓迎されました。もうすごい、見たこともなかったようなホテルに泊まりました。それにニューヨークときたら、いやあもう、現実とは思えなかったですね。

アメリカには数回行きましたが、テレビ出演中心でした。エド・サリバン・ショーやスマザーズ・ブラザーズ・ショーとか、他にも2つぐらい出ましたね。

モーリスは過小評価されている!

JB 先ほど「レモンは忘れない」の話が出ましたが、あの曲にもビー・ジーズの実験的な面があらわれていますね。スタジオはアイディアであふれていたのでしょうね。

ヴィンス それはもう! モーリスがすごかったです。すごいアイディアを出すんです。ベースが弾けて、ピアノとか、キーボードが弾けて、すごく才能がありました。スタジオにメトロトンがあって、聞いたこともないような音が出るのでモーリスはメロトロンがすごく気に入ってました。だからメロトロンが入った曲がいっぱいあるんです。みんなであれこれわいわいやりながら、曲を組み立ててゆきました。苦労してやるっていう感じではなく、何日もかけて曲を仕上げたりはしませんでしたね。けっこう早く、ぱぱっとまとめてたんです。どれもすごく自然にどんどん出てきた感じの曲で、曲にそれがあらわれていると思います。そのまんま、なんです。テイク54とか、そんなんじゃなくて、ダダっと仕上げたものなんです。あれは素晴らしかった。

JB 「レモンは忘れない」のピアノはモーリスですか?

ヴィンス そうです、モーリスはすごかったですね。

JB モーリスはバリーやロビンに比べると過小評価されていると思いますか?

ヴィンス ああ、間違いなく、モーリスは本当に過小評価されてましたね。最後になったアルバム(This Is Where I Came Inのこと)に「マン・イン・ザ・ミドル」というモーリスの曲が入っていますが、あれこそまさにモーリスでした。バリーとロビンの間に入る仲介役がモーリスだったんです。モーリスのおかげで持っていたんですよ。いつも愉快で、楽しく冗談を飛ばしたりしていて、一緒にいると楽しくなる人でした。スタジオでもいつも楽しそうにやっていました。

ぼくはクラプトンとかジェフ・ベックとかを聴くのが好きで、ギブソンとレスポールを持っていたので、スタジオ入りしてウォーミングアップするときに「ストレンジ・ブルー」とか、クリームの曲をやったりしていたんです。モーリスも、ぼくやコリンと同じぐらいそういうのが好きでした。一度はバリーも仲間入りしてなんか一曲歌ってくれたりしたことがあります。

モーリスはいいやつでした。バリーとロビンの間にはちょっと問題があったんです。どうもずっとそうだったみたいなんですが、ぼくはそれ以前には気がついていなかった。何が問題かって、ふたりともすごい声の持ち主でしたからね。でもロビンの声はバリーの声とはぜんぜん違う。だから誰がリードボーカルをやるか、ということでいつももめてたんです。最初はそんなことなかったんですが、少したつと徐々に問題が浮上してきました。で、だいたいはモーリスがその場を収めちゃってました。

(その2に続きます)

{Bee Gees Days}

 

 

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