【1968年8月】シングル「獄中の手紙」レビュー(Melody Maker紙)
全米ツアー・キャンセルの報が表紙に掲載されたメロディ・メーカー紙1968年8月3日号には、「翌日」つまり同年8月4日発売のビー・ジーズの(その段階での)新曲「I’ve Gotta Get A Message To You(獄中の手紙)」のレビューが『Pop singles』欄のトップに写真入りで大々的に掲載されています。執筆者は音楽評論家のクリス・ウェルチ。
これ以上かっこよくなるのは無理だが、この曲がでればまたもっとがっぽり稼ぐだろう
ビー・ジーズ「獄中の手紙」(ポリドール)。ロビン、バリー、モーリスはいつも悲しい曲を書く。これもまた悲しい曲だ。だけどそんな彼らはいつもいつも悲しみと苦しみに打ちひしがれているというわけではない。
ロビンとモーリスはけっこう皮肉屋だし、バリーは儲けた金の重みであえぐポップ・スターとしてはほがらかな方である。「かっこいい上に金持ち」という重荷に、彼らは明るくたくましく耐えているのだ。ぼくらもお手本にしよう。彼らは、これ以上かっこよくなるのは無理だが、この曲が出れば、またもっと金持ちになるには違いない。ギブ兄弟作、ロビンがいつもながら説得力に満ちたボーカルを聴かせる。
うれしくなっちゃう
それともうひとつ、うれしくなっちゃうのは、すっきりしたアレンジ、力強いベース・ライン、バックにかすかに聞こえる泣きむせぶようなリード・ギター、そして全体のプロダクションの素晴らしさだ。
これはまた皮肉な書き方ではありますが、当時の彼らが「金持ち」(稼ぎまくっている)という角度で語られることが多かったのは、1.ロバート・スティグウッドの薫陶もあって、彼らが「スターらしく」使いまくった。2.歌うだけでなく、曲も作っていた彼らは、事実、ソングライターとして注目されたことで、単に歌うだけのアーティストとは比べものにならないほど印税で稼いでいた、という2点が背景にあるかと思います。
この論評を改めて読んで、ふと思い出したのは、『Here At Last …Bee Gees…Live(ビー・ジーズ・グレイテスト・ライヴ)』が発売されたころにたしかローリング・ストーン誌に掲載されたアルバムレビューです。やっぱり「プロダクションがウルトラ・クリーンだ」ということが言及されていたような…。それとやっぱり、「聴くと楽しい」と書かれていたと思います。
面白いのは、かなり変わった設定の歌(執行を待つ死刑囚の歌)であるにもかかわらず、発表当時のこのレビューではその点が特に注目されていなかったことでしょうか。この曲はロビンの発想であることはバリーがミソロジー・ツアーのMCなどで言及しています。ロビン自身は「脚本を書くような感覚」だったと発言(ロビン・ギブ、ライブCDについて語る)しています。
この変わった設定についてはアメリカン・ソングライターの記事に取り上げられた(既報)角度が抜群に面白く、そのときに「近くこのことについて書いてみたい」と書いてから、あっという間に3年以上が経過してしまいました。というわけで、この曲が発表されて52年(半端~)ということでもあり、近く本当にそのあたりについて書いてみたいと思います。
「獄中の手紙」というと、これまではモーリスのベースに耳がいきがちでしたが、最近のヴィンスの一連のインタビューを聴いたいまでは「泣きむせぶようなリードギター」に注目(注耳?)して聴きなおしたくなりました。70年代のビー・ジーズ・バンドでドラマーだったデニス・ブライオンの書いた本「You Should Be Dancing」を読んだ後では「ドラムスに注耳」したくなったものです。新鮮な角度からこのあたりのクラシックを聴きなおすというのは楽しいですね!
{Bee Gees Days}
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