アンディ・ギブが歌う「イン・ザ・モーニング」

1958年生まれのアンディ・ギブはマーク・レスター(1958年7月11日生れ)とトレーシー・ハイド(1959年5月16日生れ)のメロディ・コンビと同世代でした。そういえば、彼が少年時代に結成したバンドの名前はメロディ・フェアといいました。(Melody FairではなくMelody Fayreと綴りを変更していましたが)

この動画は「イン・ザ・モーニング(モーニング・オブ・マイ・ライフ)」を歌うアンディ・ギブ。1983年にアメリカで放送された高齢者と若者の交流を描いたテレビ映画『Granpa Will You Run With Me(おじいちゃん、一緒に走ってくれる?)』にカメオ出演した時の映像だということです。すぐれた情報サイトであるGibb Songsには、「このビデオは1980年に制作された」とあります(1980年の項参照)ので、実際の撮影時期をはじめ、詳細は不明です。

実は数年前にUniversal Music Japanがアンディのアルバムをまとめて再発売した時に関わらせていただいたので、まだきちんとした形で日の目を見ていないこのアンディによるカバーをなんとかボーナス・トラックにできないものかと関係者に連絡してみたのですが、結局わかったのはこの時期のアンディの作品は権利関係が複雑なものが多く、どうしようもない(涙)、ということでした。これから少しでも状況が改善されていくことを祈っています。

ところで『Granpa Will You Run With Me』の主演はジョージ・バーンズ。兄ビー・ジーズたちがピーター・フランプトンと共演した映画『サージャント・ペッパー』でハートランドの市長ミスター・カイト役を演じた名優・コメディアンです。ビー・ジーズと一緒に味のある喉を聴かせる”Being For the Benefit of Mr. Kite”も印象的でしたね。

この関連でしょうか、アンディ・ギブは1979年に放送された『George Burns’ 100th Birthday Party(ジョージ・バーンズの100歳の誕生パーティ)』にゲスト出演しています。ジョージ・バーンズは1896年生まれですから、1977年当時、すでに高齢のスターとして知られていました。けれども100歳の誕生パーティというとどう考えても計算があわないのですが、それもそのはず、このパーティ、17年早く(だいぶ早い!)企画されたものだそうです。

その後、バーンズは長寿をまっとうし、最晩年まで舞台に立ったりしながら1996年に100歳で亡くなっています。ちょっと驚いたことには、この記事を書くために確認してみたら、なんとバーンズは1996年3月9日に亡くなっていました。アンディの命日と1日違いです。アンディの方が8年も早く亡くなってはいるのですが。

いま見ると、この『100歳の誕生パーティ』での若きアンディと老優ジョージ・バーンズのやりとりには胸に迫るものがあります。すでに人生の大半を生きたと自覚しているジョージはアンディに「kid(ぼうや、とか、若いの、という感じでしょうか)」と呼びかけ、「がんばってるじゃないか」とほめたたえます。するとアンディの方は、ある意味で若さの持つ傲慢さと鈍感さゆえというべきでしょうか、少しも悪びれずに「ぼくも早くあなたみたいな年寄りになりたい。今のぼくと今のあなたを交換できたらなあ」というのです。バーンズ氏、すかさず、「いいねえ、君とぼくが交換すれば、未知の世界が開けそうだよ」とニヤリ。

バーンズの「老年」とアンディの「若さ」を活かしたギャグの応酬ですが、この段階で誰が想像したでしょう。アンディは老いることが許されず、ジョージ・バーンズよりも早くこの世を去ることを。

『ジョージ・バーンズの100歳の誕生バーティ』でバーンズと共演し、「愛をすてないで」を歌うアンディ・ギブの動画はこちらです。

話を「イン・ザ・モーニング」に戻すと、ここでアンディが歌っているのは、映画『小さな恋のメロディ』のサウンドトラックで歌われた1970年のビー・ジーズ・バージョン(オーストラリア時代の1965年にバリーが書いた曲なので彼らにすれば旧作のリメイクということになります)とほぼ同じアレンジです。

映画ではその部分が省略されていましたが、この歌には「生き急いではいけないよ」という”大人の視点”が入っています。”人生の朝”というフェアリー・テールのような趣のあるこの美しい歌は、少年の面影のままに去っていたアンディにふさわしいといえるかもしれません。

Remembering Andy Gibb in the month of March and always.

こちらもどうぞ⇒ 訳詞コーナー「イン・ザ・モーニング」

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