モーリスへの手紙≪1968年7月≫

手元にあるのは時間が経って紙の色が変色した「海外文通ABC」という小冊子。「英語フレンド8月号別冊付録」と書いてあります。8月、つまり1968年8月号です。

「英語フレンド」というのは当時の学習雑誌。インターネットもEメールも夢のまた夢だった時代の中学生向け「海外文通指南」といった内容です。

自分と相手の住所の書き方から始まって、手紙の書き出しの言葉、封筒の表書きのしかた、などが丁寧かつ具体的に説明されています。その他、「実用100の文例」なんていうのもありまして、This is my first letter in English.(これは私が英語で書いた最初の手紙です)等々の文例が。

で、そのあとに手紙の文例が4つ紹介されています。「日本から海外の友へ」が2例、「海外から日本の友へ」(あっちから来た、というケースですね)が2例。

そしてなんと!面白いことに、この「日本から海外の友へ」の文例、2つあるうちの1つが、モーリスへのファンレターなんです! なになに…。

中学生が書いたという設定の簡単な英語ですから翻訳も特に必要ないとは思いますが、一応、以下にざっと日本語でご紹介します。日付けは今を去る42年前の7月27日です。

親愛なるモーリスへ、

初めてお便りします。わたしは14歳の日本の女の子。ビージーズの大ファンです。

あなたとロビンはふたごで、バリーが一番上のお兄さんなんですってね。ふたりとも素晴らしい歌手ですね。ビージーズの歌を聞くとわくわくしちゃいます。とくに好きな曲は「マサチューセッツ」です。

あなたはビージーズのメンバー中で最年少なんですよね。もう、だーい好き! とってもかわいくて、ベースがうまいんだもん。友だちにもあなたのファンがいっぱいいます。いつもみんなであなたやビージーズのことを話してるんですよ。

友だちのケイコはバリーが一番好きなんです。リーダーだし、5人の中で一番背が高いからですって。6フィート1インチもあるなんてびっくりです。バリーは日本のグループサウンズの人気者、沢田研二にそっくりだという人もいます。でもわたしはバリーの方がずっと素敵だと思います。

来月、ビージーズはアメリカへ行くと聞きました。ぜひ日本にも来てくださいね。

いつも忙しいと思いますが、できたらお返事ください。またお便りします。

愛をこめて、 キムラユミコ

P.S.友だちと一緒のスナップをお送りします。全員モーリスの大ファンです。

うーん、これは本物、それともヤラセ? 私自身はこれはポリドールが当時展開していたキャンペーンの一環で、本物のファンレターではないんじゃないかと思います。

「ロビンとふたご」「ベースプレーヤー」など、一応、ファンらしいツボ情報はおさえてありますが、ほんとにファンが書いたとは思えないのです。その理由はモーリスの名前がMauriceじゃなくて、Mawriceとなっているから(爆)。百歩譲って英語のできない実際に中2のファンが書いたとしても、大ファンである相手の名前の綴りは間違えないんじゃないかと…。

いずれにせよ、当時のビージーズのアイドル風の人気ぶりと、これを仕掛けた(?)レコード会社の考えるメインターゲットが女子中学生あたりだったことがなんとくうかがえます。

今、モーリスがこれを読んでくれたら……なんだかくすぐったそうな顔をするかもしれませんね。ああ、いま、モーリスに手紙が書けたらなあ…。

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