【1968年⒓月】ヤング・ミュージック誌「68年ポピュラー界をふりかえる」
これ、たしか当時の音楽雑誌『ヤング・ミュージック』の1968年⒓月号に掲載された記事だと思います。表紙は黄色っぽい色で歌っているミック・ジャガーの写真が載っていました(ような気がします)。
68年の総括、つまり55年前のことです。最近、ジェフ・ベック、YMOの高橋幸宏さんなどミュージシャンの訃報が相次ぎ、改めて時の経過を思わされます。ベックのファンの方でしょうか、SNSに「日本に来なくても、アルバムを出さなくてもいいから、元気で長生きしてほしい」というようなことを書いていらしゃって、深く共感しました。
映画『ビー・ジーズ 栄光の軌跡』にも印象的に描かれていたように、すでにバリーひとりとなってしまったビー・ジーズ。もう新曲が出なくても(出ればうれしいけど)、アルバムが出なくても(出ればうれしいけど)、映画が実現しなくても(実現すればうれしいけど)いいです。バリーにはただただ元気で幸せでいてほしいです。
上の記事に話を戻して、67年秋にシングル「ラヴ・サムバディ」で日本に初登場したビー・ジーズでしたが、本当の意味で日本でメジャーに躍り出たのは68年になってから、初春に発売されたシングル「マサチューセッツ」の大ヒットに負うところが大きいと思います。
すでに67年春に世界デビューを果たしていた5人組ビー・ジーズ。「マサチューセッツ」は67年秋に全英ナンバーワンを達成していますから、数カ月の時差があったわけで、この間を埋めるように、68年前半は次から次へとビー・ジーズのヒット曲が登場しました。忘れられない日々です。
後半やや息切れ気味というのは、実は遅れてスタートした分がまとめて出ていたために、ものすごいペースになっていて、それが落ち着いただけ、という見方もできます。
『ホリデイ』『マサチューセッツ』の40万枚ヒットで、ビートルズをしのぐ大物と注目されたが、後半はいくぶん息切れ。
朝妻 グラモフォンは洋楽というと返品の山だった。それがビー・ジーズの『マサチューセッツ』で宝の山に変わった(笑)。
湯川 レコード会社には波があり、映画音楽で売りまくったキング、ビートルズの出現で日の出のいきおいとなった東芝、そしてことしはビー・ジーズのグラモフォン(笑)。
福田 なぜ、あんなにヒットしたかというと、やっぱりメロディーのよさにつきるだろうね。
湯川 それに発売のタイミング。日本のGS界でもグループ・ボーカルがそろそろ限界に近づき、ソロが注目されはじめていた。そこにメロディーのすばらしい『マサチューセッツ』が出て、日本のGSがワーッととびついちゃった!
折田 タイミングのよさはたしかにあったけれど、原曲がズバ抜けていたことと、ビー・ジーズというグループの実力じゃなかったかと。
福田 これまでの日本だと、むこうでヒットしなくてもゴリ押し宣伝してなんとか話題にしてしまった。が、最近ではそういう宣伝だけじゃ通用しなくなった。『マサチューセッツ』は日本だけでなくむこうでも大ヒット。そのニュースがかなり刺激になった。
湯川 インチキなものではいくらお金をかけて宣伝してもヒットしないということね。つまり『マサチューセッツ』は本物だった(笑)。
朝妻 ビートルズ、ローリング・ストーンズを別格にしたら、ビー・ジーズはイギリスの代表的グループだ。ただ『マサチューセッツ』があまりにも強すぎて、そのあとに発売された彼らの新曲の影がうすくなったけど…(笑)。
(この特集は座談会形式で、話者は朝妻一郎さん、湯川れい子さん、福田一郎さん、それにグラモフォンの折田育造さんだと思われます。切り抜きの形で保存していたのでフルネームは推測ですが、まず間違いないでしょう)
ちなみに”時差”のせいで、年頭の「マサチューセッツ」のヒット以降、68年中にどどっと日本で発売されたビー・ジーズのシングルは次の通りです。ラジオなどのポップス・ベスト10番組では常にビー・ジーズの曲が複数入っているという、その勢いはまことにすさまじいものがありました。この時代を体験できたのはファンとしてとても幸せなことだったといえるかと思います。
3月 「ふりかえった恋/ジェイミー・マックヒーターズ」
5月 「ワールド/サー・ジェフリー」
6月 「ワーズ/シンキング・シップス」
8月 「ジャンボー/恋するシンガー」
11月 「獄中の手紙/キティ・キャン」
この大進撃の起爆剤となった「マサチューセッツ」の魅力ですが、折田さん(当時のグラモフォン/ポリドールの洋楽担当者)が「曲の魅力だけでなく、ビー・ジーズの実力もあった」と言っているのは自社アーティストだからというだけでなく、しごくまっとうな発言であると思います。
{Bee Gees Days}
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