製作チームが語ったビー・ジーズの新作ドキュメンタリー『How Can You Mend A Broken Heart』

10月上旬に行われたマイアミ映画祭ではビー・ジーズの新作ドキュメンタリー『How Can You Mend A Broken Heart』が、彼らが数々の名曲を生み出したクライテリア・スタジオに近いドライヴイン・シアターで上映されました。上映に先立ち地元紙ニュー・マイアミ・タイムズに製作チームに取材した記事(オンライン版2020年10月7日付)が掲載されました。映画の内容に加えて、製作側の視点などもうかがうことができる内容ですので、以下に抜粋をご紹介します。

細分化が進んだ現在のポップ・カルチャーの状況からは、かつてビー・ジーズがどのぐらい巨大な存在だったか想像しにくい。バリー、ロビン、モーリスのギブ三兄弟が1958年に創立したこのグループがいかに70年代を席巻したかは、現代人の理解を超えるものがある。ギブ兄弟は1200万枚のレコードを売り上げ、9枚のシングルをチャートのトップに送り込んだだけでなく、ディスコというジャンルの”顔”ともなったのである。

新作ドキュメンタリー『The Bee Gees: How Can You Mend a Broken Heart』は、この三人組グループのいまだに続く――音楽上の影響力をはじめとする――強大なインパクトを描き出そうという試みだ。明10月8日にDezerland Park Drive-Inでプレミアが予定されている。20世紀でもっとも人気があった音楽アーティストのひとつがきわめた栄光と彼らに対する反動とを、ご自分の車のシートでゆったりとくつろぎながら鑑賞していただきたい。

ドライヴイン・シアターを使ったこの上映は、マイアミ映画祭の秋期上映の皮切りとなる。偶然だが今回の上映場所は、ビー・ジーズが「ジャイヴ・トーキン」から「ブロードウェイの夜」まで数々のヒットをレコーディングしたクライテリア・スタジオからわずか1ブロックのところにある。

当然ながら、1975年以降ビー・ジーズのホームグラウンドとなったマイアミ市はこの映画を強力にサポートしている。

「彼らにマイアミ行きを勧めたのはエリック・クラプトンです。マイアミの陽光がビー・ジーズの進化を助けました」と映画のコプロデューサーのひとり、ジニー・エルファント・フェスタさんは語る。「彼らのキーボーディストがスーパー8カメラで撮影していたマイアミの美しい風景を映画中に使うことができました」

「当時の彼らは若かった。マイアミに来たのは音楽を作るためだけでなく、楽しむためでもあったのです」と、ライター兼コプロデューサーのマーク・モンロー。「マイアミのダンスミュージック、いろいろなコミュニティ—―そうしたものすべてが彼らの音楽を形成する材料になりました」

1978年にビルボード・チャート・ナンバーワンに輝いた「恋のナイト・フィーヴァー」のプロモーション・ビデオで、ビー・ジーズがこの第二の故郷マイアミを取り上げているのは有名な話だ。ビデオの中では、コリンス・アヴェニューに車が往来し、ヴェガスもどきのネオンで飾られたサニー・アイルズ・ビーチの映像に重なってギブ兄弟の姿が映し出される。いまはない海岸沿いのモーテルやデリカテッセンは、ディスコの名曲をバックに流れたこのときほどゴージャスに見えたことはない。

だが作り手に言わせれば、この映画はおなじみの背景を使っているという以上に深い内容を持っているという。

「彼らがドラムループやシンセサイザーの使用においてパイオニア的役割を果たしたことも描いています」とエルファント・フェスタさん。「『ブロードウェイの夜』のレコーディングがどう進化していったかについて語られる場面もあります」

ギブ兄弟の及ぼした影響については、現代のビッグ・アーティストたちが進んで語ってくれたそうだ。

ニック・ジョナス、マーク・ロンソン、コールドプレイのクリス・マーティンに取材しました。ビー・ジーズからどんな影響を受けたか、みんな飛びつくように語ってくれました。もう映画ができてしまってから、フー・ファイターズのドラマーのテイラー・ホーキンズに見せたら、まだ間に合えば自分もビー・ジーズについて話したい、大好きなんだ、と頼まれましたよ」

また、映画はディスコというジャンルとビー・ジーズに対する激しい反動にも真摯に取り組んでいる。この反動の頂点となったのが、1979年にホワイト・ソックスのホーム・スタジアムであるコミスキー・パークでショック・ジョッキーのスティーブ・ダールの音頭で実施された悪名高い「ディスコ・デモリッション・ナイト」である。ビー・ジーズはゲイでもブラックでもなく、ストレートな白人男性グループだったが、この反感のほとんどは差別意識に基づいていた、という視点を映画はとっている。

ビー・ジーズは成功していたためにターゲットにされた」とモンローはいう。「ビー・ジーズはマイノリティ・グループによるR&B、それにダンス音楽に影響を受けていました。ディスコテックは黒人、ラテン系、ゲイの人たちが踊りに行く場所でした。それを好まない人たちも多かったのです。ディスコがターゲットにされたのは、主流の音楽に新しい文化が流れ込んだことへの反感も大きかったのだと思います」

けれどもこの映画『How Can You Mend A Broken Heart』は社会学的な分析である以上に、ビー・ジーズの音楽を楽しむためのものだ。ソーシャル・ディスタンスの最中に観るには危険な映画かも、とエルファント・フェスタさんはいう。

「この映画を観ると車の中にじっと座っていられなくなりますよ。踊りたくなっちゃう」

映画『The Bee Gees: How Can You Mend a Broken Heart』は Dezerland Park Drive-In (14401 NE 19th Ave., North Miami)で10月8日(木) 7:30 pmに上映されます。チケットは車1台につき50ドル。購入は以下でmiamifilmfestival.com

(David Rolland)

ドライブイン・シアターでの上映といえば、映画『グリース』の一場面などが思い出されますが、たしかにソーシャル・ディスタンスの時代には良いアイディアかも。「危険な映画」である理由も納得です。日本でもドライヴインで上映されたら面白そうですね。

{Bee Gees Days}

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