ロバート・スティグウッド、ビージーズを語る(パート1)【ディスク&ミュージックエコー紙1969年3月8日号】
古い記事を紹介してほしいというご要望が多いので、今日は英国の今はない音楽紙ディスク・アンド・ミュージックエコーの1969年3月8日号に掲載されたビージーズ特集をご紹介します。
これは3月15日号と2週間にわたる特集記事で、マネージャーのロバート・スティグウッドが各メンバーについて語るというちょっと面白い企画です。
パート1にあたるこの3月8日号にはご覧のようにロビン&モーリスのふたごコンビが登場しました。
ロビンについては「健康管理にすごく気をつかっている」と述べられており、ロビンの健康マニアぶりはかなり有名でしたから、そうやって培われた体力で今回の病気もぜひ吹き飛ばしてほしいですね。モーリスはちょうどルルと結婚したばかり。家庭をかまえて落ち着いた様子が語られています。
健康を気にするロビン
ポップス史上でもまれなる声の持ち主ロビン・ギブ。「ポップス」と限定したのはロビンをオペラ歌手と比べたりするつもりは毛頭ないからではあります。でもロビンの小指一本とったってタムラ・モータウンが束になってもかまわないぐらいのソウルが詰まっているんです。
とにかく素晴らしい声です。ところが私やみんながどんなに褒めても、ロビン自身は被害妄想のかたまりです。世界中がオレの敵だ、と考えているようなところがあります。自信がなくて、ちょと批判されただけで傷ついてしまうんです。アーティストに批判はつきものなのですが、ロビンはすごく気にします。懇意にしているジャーナリストがロビンの歌についてちょっとでも悪いことを書くと、個人的な悪意ととってしまう。このせいでしょう、ロビンにはかなり気で病むようなところがあります。実際には牡牛みたいに健康なのに、いつも体のことを気にしていますね。また、ビージーズ関係の事実をすごくきっちりフォローしているのもロビンです。8歳のころから書いたギブ兄弟の曲のカタログを自分で作っていて、世界中の国のチャートを記録していたりね。
それからビージーズの中で一番のかんしゃく持ちもロビンです。些細なことでいらいらしています。最近ではシングルのA面を「ランプの明かり」にする、しないで私ともめました。でもこれまでに出してきたシングルだってグループ全員が気に入ったものなんて一枚もありません。必ず誰か不満があるものです。今回はそれがロビンだったということですね。まあ、私には長い経験があるので、最終的にはみんなに納得してもらえる決断をしたと思っています。
これだとちょっとロビンについて辛口すぎたかもしれません。ロビンはとにかく素晴らしい想像力の持ち主なんです。「オデッサ」の歌詞を見てください。あれは史上最高のポップソングのひとつだと思います。
それにロビンは面白い。かなりチャップリン風でね。レパートリーが豊富で、いろんな人のまねが得意です。歯並びとか髪型とか、ステージ上のしぐさが交通整理みたいだとか言われて、意図しないところで笑われたりもしてますけど、観客の反応を見ればわかるように、ロビンもキャーキャー言われているんですよ。とにかく本当にまじめにとっていいアーティスト、それがロビンです。
すっかり落ち着きの出たモーリス
ついついバックにとどまりがちなイメージがあるけれど、実はビージーズのアレンジをつかさどるブレーンであり、マルチな演奏者であるモーリス。大きな貢献をしています。ボーカル面ではコーラスでハーモニーをつける役が多いのですが、スタジオでは大きな役割を果たしています。ベース、ピアノ、オルガン、メロトロン、リズムギターを弾いて、いまやリードギタリストでもあります。
しかもあとのふたりの兄弟との関係が素晴らしい。曲を書くとモーリスが形を整えてレコーディングにいたるのですが、それには舌を巻きます。これがあるから、あとのふたりがスタジオで曲を書いて、すぐにモーリスがアレンジしてレコーディングに入れるんです。
人間としてはギブ三兄弟のうちで一番つきあいやすいのも彼でしょう。いつも明るい性格ですから。ロビンほど気難しくないし、大人です。コンサートなどで群衆の抑えがきかなくなったときにロビンはおびえてしまいますが、モーリスなら笑い飛ばしてしまう。
モーリスはリラックスした人格なので一緒にいると楽しいし、もてなしの名人でもあります。ルルとモーリスが自宅で人をもてなすのを見ていると誇らしくなります。結婚してよかったと思いますよ。これからは今まで以上に責任があるわけですから落ち着くでしょう。ルルはとてもしっかりしていますしね。ありふれた言い方ですが、ほんとにお似合いのカップルです。何よりもモーリスがほんとに彼女に惚れているんです。モーリスがワイルドだった時代は終わりました。ご存じのように、昔はかなり飲んでいたのですが。もちろん仕事に影響するような飲みかたではありませんが、いずれにしても今では酒量も減りました。
モーリスは社交的です。人に会うのが大好きなので、ツアーも大好きです。モーリスとコリンがツアー好きで、バリーとロビンがツアー嫌いです。それからモーリスは浪費家ですね。服を買うのが好きで、ちょっと金を使い過ぎかな。服装の趣味がよくて、まだ19歳なのにとってもおしゃれです。それから家族や友だちに対して気前がいいですね。
ほんと、モーリスはロビンとはぜんぜん違います。でもギブ三兄弟は本当に仲がいい。もちろんすごい口げんかもするので、その場に居合わせると、殺し合いになるんじゃないかと思うぐらいですけど。でも2分もするともう仲直りしていて、この仲の良さがレコードで聴くあの素晴らしいハーモニーに結実するのです。
ヴィンスが去ったあとの4人組時代のメンバー感ですが、不協和音が響き始めた時代でもあり、確かにいま読んでもロビンについてはやや辛口な印象があります。モーリスはこの時代からすでに酒量が問題になっていたんですね。翌週に掲載されたパート2ではバリーとコリンが取り上げられていますので、後ほどご紹介いたします。
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