ピーター・バラカンさん『ビー・ジーズ 栄光の軌跡』トーク・イベント

音楽映画祭での上映後『ビー・ジーズ 栄光の軌跡』について語るピーター・バラカン氏

既報の通り、ピーター・バラカンさんの音楽映画祭(於角川シネマ有楽町)でドキュメンタリー『ビー・ジーズ 栄光の軌跡』が上映され、9月15日の上映後にはバラカンさんによるトーク・イベントが行なわれました。

映画のラスト、感情的なクライマックスともいえるバリーの言葉「弟たちさえもどるなら……」について話題にした時に、バラカンさんは涙で言葉に詰まってしまい、会場からは拍手が起こり、もらい泣きしている人もいたそうです。この映画、そしてビー・ジーズの音楽の持つ力を改めて思い知らされた気がしました。

バラカンさんによるトークの内容を以下にざっとまとめてご紹介します。

●この映画に関しては(宣伝プロデューサーの方と親しかったこともあって)上映前に話題にのぼったときには、「特にビー・ジーズのファンじゃないしなあ」という気持ちだったけれど、観たら「素晴らしい作品で、内容が面白かったので、即、この映画祭のラインアップに加えることに決めた。

●ビー・ジーズのストーリーも面白かったが、コールドプレイのクリス・マーティンをはじめ、ゲスト陣のコメントも秀逸。特にマーティンの「自分たちの世代は”有名になること”の危険性やメディア対応をすでに理解していて、心がまえもあるが、ビー・ジーズは世界的に爆発的に売れるということを体験した最初の世代だったのでショックも大きかっただろう」という発言などが印象的。

時代の流れで見ると『サタデー・ナイト・フィーバー』はそれまでの記録をことごとく破るような大成功をおさめ、しかも2枚組のLPだった。このアルバムの大ヒットによって業界の”成功”の基準値があがってしまった。その後、80年代になってMTVが登場、プロモーションビデオも大作化の一途をたどった。逆にいうと「売れるものでないとビデオにお金をかけられない」という構図ができていった。

●ビー・ジーズの作品中で一番好きなのは「ジャイヴ・トーキン」。レコーディングにあたり、音楽用語の”通訳”ができる人物としてアルビー・ガルートンが仲間に加わったり、そもそもマイアミ入りはエリック・クラプトンのサジェスチョンに基づいていたり、歴史を変えるような人たちが、みな「たまたまそこにいた」感じで集結していき、橋を渡る車の音から曲がインスパイアされるなど、状況が積み重なっていって、ビー・ジーズが爆発的に売れた時代につながっていくのも面白かった。

●1974年に日本でシンコー・ミュージック関連の仕事をしていたが、当時の日本で海外から洋楽曲を海外から買い付ける仕事を担当していた人の基準は「12歳の女の子の考え方を知ること」。その上でプロモーションでごり押しして売るというやり方が、当時一般的だった。

●映画中で話題に上っているドラム・ループについてーーミニマル・ミュージックのスティーヴ・ライヒによる実験的な使用、ザ・ビートルズの「トゥモロー・ネバー・ノウズ」(『リボルバー』所収)での効果音としての使用など、それまでにも例はあったが、ビー・ジーズはダンス曲でのリズムとして使用するという新しい道を開いた。

●個人的には同じリズムの繰り返しが単調で、ディスコは面白くない。日本のディスコに行って一列に並んで踊るのを見て驚愕した。唯一、例外的に好きなのはシックの「グッド・タイムズ」で、機械を使わないリズムに抗しがたい魅力があり、ディスコというよりR&Bといえる。

ざっとかいつまんでトークの内容をご紹介しましたが、バラカンさんについては、昨年、『ビー・ジーズ 栄光の軌跡』の劇場公開前にラジオ(?)でのレビューなどを拝聴しましたが、「ビー・ジーズが特に好きというわけではないし、詳しいわけでもない」とおっしゃっていて、実際にデータ的には間違いも散見されたので、実は今回のトークの内容にはそれほど期待していませんでした。それがトークの途中で言葉に詰まるほど、心をこめて語ってくださったのには感動しました。

トーク自体では、ビー・ジーズについて、というより、ご自身の仕事での体験などにひきつけて、”時代の流れ”という切り口で語ってくださったようです。

それから面白いのは、バラカンさんが彼らの特徴を表すのに一度「ビー・ジーズ節(ぶし)」という言葉を使われたこと。この言い方は、ディスコ以前、60年代から彼らを聴いていたオールドファンはよく耳にした記憶があるのではないでしょうか。あの独特のメロディライン、個性的な歌い方や声などを表して、当時よくこの言葉が使われていた記憶があります。言い得て妙!と思います。

もうひとつ、ビー・ジーズ関連について補足すると、「ディスコのリズムが単調」という点についてですが、一般的に、「それまで単調なリズムに堕して衰退しかけていた”ディスコ”に美しいメロディをもたらして世界を広げた」のがビー・ジーズであるといわれています。(『サタデー・ナイト・フィーバー40周年記念盤』解説等をご参照ください)

私自身は体調が思うように回復せず、今回の上映を見に行くことは断念したのですが、足を運ばれた方たちによると、映画の上映終了後に客席から自然に拍手が沸き起こったそうです!(わーい!)

観客の入りは半分弱ぐらい。観客の年齢層は総じて高め。(これはビー・ジーズ世代ということでしょうか。昨年11月からの劇場公開に際しても全体に年齢層が高いというのがデフォルトでした)

上映館は以前に『小さな恋のメロディ』のリバイバル上映も行われた角川シネマ有楽町。音響もよく、やはりこの作品は映画館で観るのがおすすめ!だということです。

またこのような機会があって、音響の良い劇場で『ビー・ジーズ 栄光の軌跡』を鑑賞することができると良いですね。

(Thanks: FUJINO-kurimaruさん、ひで坊さん)

{Bee Gees Days}

 

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