【2023年1月】ガーディアン紙が選んだビー・ジーズの名曲ランキング40選(その2)


画像は英ガーディアン紙記事”The Bee Gees 40 greatest songs ranked”(オンライン版2023年1月19日付け)より

お待たせしてしまいましたが、第一弾(40位~21位)に続く第二弾(20位~1位)です。

20.傷心の日々 (1971)
「若葉のころ」をめぐる不和を経てロビンがビー・ジーズに復帰したことについての曲なので、やはり脆い雰囲気がある。オリジナルはビー・ジーズにとって初の全米No.1。1972年、アル・グリーンの見事なカヴァーを得て花開いた曲。19. ユー・シュッド・ビー・ダンシング (1976)ビー・ジーズがレコーディングした中でも筋金入りのディスコ・ナンバー。「ユー・シュッド・ビー・ダンシング」はタイトルの通りしつこく迫る曲である(訳注 このタイトルは「君も踊らなくちゃ」という意味。強い勧誘です)。イントロはひとつの音が延々と繰り返されるリズムトラック 。切迫感のあるブラスがメリハリをつけ、コンガのブレイクはうねるようにファンキー、まるで午前2時に込み合った汗みどろのダンスフロアのど真ん中にいるような感じだ。18. ラヴ・ユー・インサイド・アウト (1979)

英国では売り上げ面で前作シングル「哀愁のトラジディ」の影にかくれているが、「ラヴー・ユー・インサイド・アウト」の方がぜんぜん良い曲である。「哀愁のトラジディ」がビー・ジーズのディスコサウンドを金切声のメロドラマにしてしまった一方で、「ラヴ・ユー」の方はまったく上品だ。ぐっと穏やかで、微妙で、コーラスが素晴らしい

17. ファニー (1975)

かくも甘美なバラードを書き(音を重ねるあまりライヴで再現できないようなハーモニーをつけて)、そこにこんなタイトルをつけるのはビー・ジーズぐらいだろう。(訳注 「Fanny」というのは女性の名前でもあるのですが、俗語では女性器を意味します)ビー・ジーズの面倒を見てくれていたヘルパーさんの名前をそのままとったんだそうだが、名前を変えればよかったじゃん。アニー、とか。とにかく別の名前にさ。

16. モア・ザン・ア・ウーマン (1977)

あまり良い曲なので『フィーバー』のサントラアルバムに2つ入っているぐらいである。ビー・ジーズのオリジナルがいいか、タヴァレスのカヴァー(こっちはシングルとしてヒットした)がいいか、甲乙つけがたい。どちらにも流れるようなきらきら感がある。自分の仕事をよく心得ているソングライターたちが書いた自信にあふれた曲である。

15. ホリデイ (1967)

「ホリデイ」ではドラムスの存在はほとんどゼロ。絢爛たるハープのグリッサンドや教会風のオルガンがあふれる中にロビンのヴォーカルが聴こえる。だが、こうした絢爛たるサウンドにもかかわらず、この曲のパワーは、イナーコードと訳のわからないキミョーな歌詞の持つなんともいえない不可思議さにある。

14. アイ・キャント・ハヴ・ユー (1977)

ビー・ジーズにはわかっていた、最高のディスコ音楽の大半は中心に緊張感をはらんでいる、うきうきするようなリズムとつらい歌詞がせめぎあっている、ということが。 「アイ・キャント・ハヴ・ユー」は、これでもかというほど悲しい片思いを歌いながらも、多幸感に満ちている。イヴォンヌ・エリマンのカヴァーが決定版とはいえ、ビー・ジーズのオリジナルも素晴らしい

13. 獄中の手紙 (1968)

実に殺人を歌ったバラードで(あまりビー・ジーズらしくないと思われる範疇の曲だが)、「獄中の手紙」の主人公は、絞首台へと向かいながら、パートナーに別れの電話ができずにいる人物。いちばん素晴らしいのは、最後のキー・チェンジのあと。ロビンは一段と苦しそうで、まるで首を絞められているように聴こえる。

12. 失われた愛の世界 (1978)

この曲には、チャイ・ライツやスタイリスティックスの超ソフトなソウルの気配がある。1978年にはとうに時代遅れでダサいと見なされていたサウンドだ。ところが結果として生まれたのがこの素晴らしい曲である。だいたい、ビー・ジーズはダサいかどうかなんて気にしたことがないっしょ?

11. ライオン・ハーテッド・マン (1967)

奥様たちのアイドルたるべきか、『サージェント・ペパーズ』の刺激を受けた実験的アーティストたるべきか、60年代のビー・ジーズは心を決めかねたらしく、二兎を狙った。ヒットしたのは涙を誘うバラードだったが、”変”な方の曲がまたすごいのだ。この曲では、なだれこむようなエレジー風のハーモニー満載のサイケデリックの世界にメロトロンとグレゴリオ聖歌風の詠唱がちりばめられている。

10. ユー・ウィン・アゲイン (1987)

ギブ兄弟にとってイギリスにおける大々的カムバックとなった曲。8年ぶりに出た英No.1である。完璧なポップソングだったというだけでなく、60年代のビー・ジーズにあった奇天烈さの気配もある。プロダクションが変わりすぎていたので、レーベル・サイドから文句が出たほどだ。モーリスのガレージで録音されたドラムトラックのストンピングがアレンジの他の部分をかき消してしまっているのである。

9. ワーズ (1968)

ビー・ジーズが1年足らずのうちに生み出してみせた”現代のスタンダード曲”第二弾。「ワーズ」の完璧なメロディと、ときに弱々しく、ときに苦悩に満ちたバリーの素晴らしいヴォーカルは、プレスリー、ロイ・オービソン、テリー・ウォーガン、ボーイゾーン(いちどきにではないが)など150曲以上のカヴァーを生んだ。

8.ブロードウェイの夜 (1975)

「ブロードウェイの夜」はバリーのトレードマークとなったファルセットを世界中にお披露目した曲である。「キャーっと叫ぶような声で歌ってほしい」というマーディンのリクエストに応じてのことだった。 しかもこれが素晴らしい曲ときている。聴くならカットなしのアルバム・ヴァージョンで。明るい音楽の後ろにいかにみじめな歌詞が隠れているかを強調するスロー・セクション入りのアルバム・ヴァージョンで聴いてほしい。

7. ラン・トゥ・ミー (1972)

「ラン・トゥ・ミー」ほどの曲(やさしいヴァース部分からアンシム風のコーラスまで、転調に転調を繰り返す構成、しかもトップ10ヒットと来ている)でさえ見過ごされがちだということからも、ビー・ジーズがソングライターとして書き上げたカタログがありあまるほどの名曲の山であることがわかる。これ、ほかのアーティストだったら代表曲として脚光を浴びてるはず。

6. 恋のナイト・フィーヴァー (1977)

レコードで聴くと何をいってるのかほとんどわからないのだが、「恋のナイト・フィーヴァー」の歌詞は実によくできていて、夜の街に繰り出すわくわく感をみごとにとらえている。「空中に期待が満ちている/これから踊るんだ」。魅惑の音楽である。ドラマチックで魅力的なヴァース、至福のコーラス。傑作だ。

5. 愛のパラダイス (1979)

シングルとしての最高位は16位どまりだったが、ビー・ジーズのディスコ時代の最後を飾ったアルバムのタイトル・トラックは、アルバムの白眉と言って良い。超スムースな70年代の ウエストコースト・サウンド(フルートにハービー・マン)のこの曲、ダンスフロアから一歩退いている。その一方で、1:30でサビが飛翔する部分はまさに圧巻だ。

4. 愛はきらめきの中に (1977)

ドキュメンタリー『ビー・ジーズ  栄光の軌跡』(2020)の中のビー・ジーズがこの曲を書いている場面では、信じられないぐらい美しいあのメロディが、まっさらの状態から生み出されている。これに対して、「愚かな人の世はぼくたちを傷つける」という被害妄想風の歌詞はどうしたって変であり、つまりにはいかにもビー・ジーズらしい

3. ジャイヴ・トーキン (1975)

ビー・ジーズのキャリアを一変させたこの曲は新しいサウンドを示していたばかりではない。すごいシングルだったのだ。目立つのに自然なフック、チャカチャカしたシンセ・ベース、橋をがたがたわたる車の音をまねたギター。ドラムは軽やかにファンキーに、踊ろうよと誘ってくる。断れるわけがない。

2. ラヴ・サムバディ (1967)

ビー・ジーズが異様なまでに才能のあるソングライター・チームであることを示した最初の兆候がこの曲だ。 バリーと一緒にこの曲を書いた段階でロビンはまだティーンエージャーである。この曲は、ほとんどたちまちに現代のスタンダード曲となり、ニーナ・シモンからロッド・スチュワートまで誰もがレコーディングした。当方のおすすめはジェームズ・カーの苦悩するサザン・ロック・バージョン。

1. ステイン・アライヴ (1977)

「ビー・ジーズは流行にのっかっただけの日和見主義者で露出過多のせいでディスコをダメにした」というのは、ギブ兄弟がディスコ音楽の作り手としていかに才能があったかを無視したトンデモ意見である。どんなに想像力を駆使しても、彼らが『サタデー・ナイト・フィーバー』のために書いた曲は、単なるうけ狙いのチンケな曲でなどありえない。中でも「ステイン・アライヴ」は完璧だ。あのオープニングのリフだけで、人の心を一挙にダンスフロアへといざなう。これでもかとループされるドラム・トラック、歌詞はバリーにいわせれば「絶望」を歌い、フックのかげには毒のある傷ついたマッチョイズムとストリートの痛みがごった煮になって隠されている。この曲はまさに時代の申し子であると同時に時代を超越している

やはりこの曲が一番でしたか…納得という感じはあります。

この筆者ペトリ―ディス以外には、このサイトでも良くご紹介している「Number Ones」コラムのトム・ブレイハンの歯に衣きせぬ筆致が好きだと書きましたが、そのブレイハンにして、「ステイン・アライヴ」には10点満点の10点をつけて、「人間が書いたとも思えない」という感じの絶賛の評を寄せています。

これは「自分が好きなビー・ジーズの曲40選」ではなく、「ビー・ジーズの名曲40選」なので、ひょっとして「ステイン・アライヴ」以外を1位にするのは難しいかもしれません。私の周囲でもファンではない人、ビー・ジーズ世代を外れた若い人にでさえ、この曲の人気は抜群です。歌詞を知らないとひたすらかっこよく、歌詞を知ると二度びっくり。(歌詞の方にはビー・ジーズが本質的に持つ”鬱”の要素が強いです)

2位もあまりに順当なので納得です。ベスト10にはちょっと意外な曲もありました。

「好きな曲40選」を選ばせてもらえたら、自分ならもっともっとマイナーな曲に走りそうではあります(笑)。

「ホリデイ」が14位というのは意外に健闘したというべきでしょうか。個人的には(好きな曲ということなら)たぶんトップ10入りしそうではありますが、「この曲のパワーは、マイナーコードと訳のわからないキミョーな歌詞の持つなんともいえない不可思議さにある」という評価には納得です。こういう何ともいえない奇妙な、だけど心に深く触れてくる歌はビー・ジーズの独壇場です。間違っても「ポップスの職人」なんて呼ばないで欲しい。(もちろん、優れた職人芸の持ち主であることは間違いないのですが)

「ファニー」というのけぞりそうなタイトルもそうですが、ビー・ジーズは、食べるように、息をするように、曲を作って生きてきた、才能と個性のある3人の兄弟が楽しみながら、ある種自由に創作に挑戦した記録です。こんなに”変”な、生え抜きのプロフェッショナルでありつつ、同時に自由にはばたいたグループは、もう二度と出ないだろうなあと思ったりします。

{Bee Gees Days}

 

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