訳詞コーナー:「ワーズ」

ご存じ、ビージーズ、1968年のヒット。『マサチューセッツ』『ホリデイ』『ワールド』と立て続けに連発された黄金の第一期(5人組時代)を代表するヒットのひとつです。

バリーのトレードマークともいうべき『ワーズ』。ライブでスポットライトを浴びて熱唱するバリーの姿が目に浮かびますね。すっかりバリーの歌という観がありましたが、最近ではロビンもソロ公演のレパートリーにとりいれ、バリー版とはまた違う味わいのある『ワーズ』を聞かせてくれています。

ここでご紹介したのはドイツ版『ワーズ』シングル。時代色の濃い「サイケ(死語の世界?)」なジャケットで、ロビンがまとっているこれは、おお、はたしてテーブルクロスか?

なんでもバリーとロビンがふたりとも誰かと言葉の行き違いを経験した直後に書かれた曲だということで、テーマはずばり「言葉」、つまりはコミュニケーションの大切さです。バリーの舞台ではこの曲の間に観客とのかけあい(つまりはコミュニケーション)が見られることでも有名です。

また、『ワーズ』はもともとはクリフ・リチャードを念頭に置いて書かれた曲だということですが、大勢のアーティストにカバーされていることでも有名です。名高いところではエルビス・プレスリーも映画『エルビス・オン・ステージ』で『ワーズ』を取り上げ、「あれには感激した」とモーリスがインタビューで述べています。  また『ワーズ』はリチャード・ハリスのドラマチックなバラード『マッカーサー・パーク』をはじめ、サビの部分が似たメロディの曲がたくさんあることでも知られています。

いつも 笑顔でいてくれないか
笑顔は ぼくたちの
距離をなくしてくれる
いつも そばにいてくれないか
君がいないと涙が出る

この世の輝きは失われた
ふたりで新しい物語をはじめよう
さあ今すぐに 今しかないよ
やりかたは
ぼくが教えてあげる

いつも 話していてくれないか
ただ ぼくだけのために
一生を君に捧げる
ここにいるよ
君が呼んだら

君はぼくが
ひとことも本気で言ってない
そう思うんだね
たしかにただの言葉だけれど
ぼくには言葉しかない
思いを伝えるためには

ただの言葉だけれど
ぼくには言葉しかない
君に愛してもらうためには…

ちょっと無粋なブンポーの話などをいたしますと、出だしのSmile an everlasting smileは、文法でいうところのいわゆる「同族目的語」(目的語と動詞が同義である形)をとった命令形です。直訳すると、「絶え間ないほほえみをほほえんでくれ」ということで、要するに「笑顔を絶やさないで」と言っているわけですね。

この「同族目的語」用法、ビージーズの歌詞ではほかにWe were ordinary people, living ordinary lives(私たちは普通の人間で 普通の生活を生きていた>普通の暮らしをしていた)(『オーディナリィ・ライブズ』)、and on my way I sing a song(道みち ぼくは歌をうたう)(『トゥー・イヤーズ・オン』)などがぱっと思い浮かびますね。

『ワーズ』のこの命令形は2番の「Talk in everlasting words」(絶え間ない言葉で話してくれ>決してだまりこんだりしないでくれ)と対になっています。つまり状況としては、今彼女は笑顔ではなく、口もきいてくれない、のでしょう。だから、「君はいつも笑顔がいいよ。で、ぼくに話してくれてるのがいいよ」と言っているわけです。

これはもうバリーの独壇場。インタビューなどでもすぐに顔を赤くしてテレるので有名なはにかみ屋のバリーですが、こんなにストレートな愛の歌を堂々と歌えればもうだいじょうぶ(って何が?)! おにーちゃんとしての頼りがいを十二分に発露させております。

基本的に何やら明るい未来が浮かんできます。バリーの歌う『ワーズ』は言って見れば男性の包容力の歌。何か、おそらくちょっとした行き違いで彼女が悲しい顔をしているけれど、心をこめて約束する言葉で万事解決。言葉しかないけれど、形なんかいらない、そこに真心があれば、というメッセージが伝わってきます。「やり方はぼくが教えてあげる」って要するに「さあ、ぼくに任せて頼ってくれればぼくがすべてきちんとしてあげる(君は何も心配いらないんだよ)」と言っているわけです。あまりにまっすぐで、聞いてるとなんかちょっとテレちゃうぐらいですね…。

同じ歌詞(当然)なのですが、ロビンが歌う『ワーズ』はまた違う雰囲気で、こちらはせつせつと歌う、なにやら失恋の歌風。このまったく違う、それぞれに強力な個性を持つ(しかし声の質はまったく違うというわけでもない)ふたりのリードボーカリストを擁していることもまたビージーズの類い稀なる強みだと改めて感じさせられる『ワーズ』競演です。

英語の歌詞はこちら。また、ファンの方が編集したという力作バージョン「歴代ワーズ」(こ、これはすごい!)と、バリー版とはまた別の雰囲気が楽しめるロビン版(2007年イスタンブール公演)をYouTubeからご紹介します。

さて、あなたはどの『ワーズ』がお好きですか。

『ワーズ』は『ベスト・オブ・ビージーズVol.1』などさまざまなベストアルバムに収められています。

{Bee Gees Days}


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