訳詞コーナー:『ギヴ・ユア・ベスト』
映画『小さな恋のメロディ』に使われた曲を登場順にご紹介していたはずが、どうしたことか、「ギヴ・ユア・ベスト」を飛ばして先に「ラヴ・サムバディ」に行ってしまいました。すみません、すみません…。(誤りを指摘してくださったサニー・ジムさん、ありがとうございました(平身低頭))。
学校帰りのバス停でダニエル君を誘って繁華街のウエストエンドに繰り出したオーンショー君。走り出したバスの座席に、解放感に包まれたふたりがおさまりかえると、喧騒の背後にかすかに歌の出だしのセリフ部分が聞こえてきます。
この「ギヴ・ユア・ベスト」は「メロディ・フェア」「若葉のころ」と同じくビージーズの1969年のアルバム『オデッサ』に収められている、フィドルやバンジョーを使ったカントリーフレーバー豊かな曲です。
フロアでスクエアダンス
スクエアダンスです パーキンスさん
さあ さあ スクエアダンスですよ
ラリーさんの奥さん パートナーをつかまえてください
おれはしがない道化師で
かけずりまわっていたものさ
昔はどっさり友だちもいた
おれの出番はみんなの最後
でもおれは友だちにベストを捧げる
ショーもこなしてきた
みんなが知ってるとも
着てるものもほとんど売っぱらった
与える者がいれば 貸すやつもいる
だからおれは友だちにベストを捧げるのさ
その通り
人生 こんなはずじゃないと思ったって
毎日が真っ暗ってわけでもない
平和なときもあったけど 今度は闘うとき
友だちにベストを捧げよう
おれはしがない道化師で
かけずりまわっていたものさ
昔は友だちがいっぱい
おれの出番が来るのはみんなの出番が終わったあと
だからおれは友だちにベストを捧げるのさ
人生 こんなはずじゃないと思っても
毎日が真っ暗ってわけじゃない
平和なときがあったなら 今度は闘う時ってわけだ
友だちにベストを捧げよう
人生 こんなはずじゃないと思っても
毎日が真っ暗ってわけじゃない
平和な時もあったけど 今は闘うときだ
友だちにベストを捧げよう
そう 友だちに誠心誠意つくすのさ
「イン・ザ・モーニング」が映画全体のイントロ、」メロディ・フェア」が若きヒロイン、メロディちゃんのテーマ、「ラヴ・サムバディ」が恋するダニエル君のテーマだとするならば、「ギヴ・ユア・ベスト」はもうひとりの主人公、ちょっと孤独な影も漂わせる頼れるガキ大将トム・オーンショー君のテーマ。
そう、最初はふたりの男の子のささやかな冒険シーンを彩る曲として、ちょっとにぎやかなこの「ギヴ・ユア・ベスト」が選ばれたのかと思ったりしていましたが、どうも考えてみると、この曲はやっぱりオーンショー君のテーマのようです。
「ボーイ・ミーツ・ガール」式の単なるロマンスの世界を脱け出して、さまざまなキャラクターや状況について書くようになった、と昨年暮れに発売されたドキュメンタリー『イン・アワ・オウン・タイム』の中でもビージーズは語っていますが、この作品もそんなもののひとつ。華やかなショービジネスの世界の裏面を歌っているような印象もあります。
にぎやかな中に哀愁を感じさせるところもオーンショー君のキャラクターにはまっているこの曲、「友だちにベストを捧げる」「今は闘うときだ」というのは、ラストのトロッコのシーンに向けて彼が果たした役割を予見させるようなフレーズでもあります。
トム・オーンショー役を演じたジャック・ワイルドは当時英米で人気アイドル。主演のテレビシリーズも持ち、当時の英米のティーン誌に掲載された映画『小さな恋のメロディ』の紹介記事を見ると、「ジャック・ワイルドの映画」という論調が主流でした。1952年生まれですから、童顔を生かして複雑な心理のガキ大将を見事に演じていたとはいえ、この段階で20歳近く、小学生役が似合っているのが脱帽ものです。が、その後、キャリアのプレッシャーもあったのでしょうか、アルコール中毒に。癌とも闘った末に、2006年に53歳の若さで亡くなっています。子どものころから芸能界で活躍していたこと、アル中との苦闘、53歳で亡くなったことなど、ジャック・ワイルドの経歴にはやはり53歳で亡くなったモーリスを思い出させる部分が多い、そんな風にあるビージーズ・ファンが語っていたのが印象的です。合掌。
英語の歌詞はこちら。この曲はYouTubeでも聞くことができます。セリフで始まる曲というのもビージーズには珍しいですね。ひょっとしてメロディちゃんの名字がパーキンスなのはこの歌のセリフ部分に「パーキンスさん」が出てくるせいかも?
{Bee Gees Days}
© 2009 - 2024 Bee Gees Days. 当サイト記事の引用・転載にあたっては出典(リンク)を記載してください。