訳詞コーナー:『ラヴ・サムバディ』

ぼくが君を愛するように…
ぼくが君を愛するように…=

ご要望に応えて映画『小さな恋のメロディ』に使われた曲を映画に登場した順番に取り上げていますが、三番目の『ラヴ・サムバディ』は記念すべきビージーズの日本デビューシングル(1967年11月)でもありました。

すでに伝説化している話ですが、この曲はもともとオーティス・レディングのために書かれたもので、オーティスが不慮の飛行機事故で他界したためにこの夢の組み合わせが実現しなかったとのこと。これについては異論もあるようですが、作者であるバリー&ロビン・ギブ自身もあちこちでそう発言しています。1967年春にニューヨークでバリーがオーティス・レディングと会ったあとに彼をイメージして書かれたということです。

オーストラリアでレコードデビューを飾ったビージーズが国際スターを目指してイギリスへ渡ったあと、国際デビュー曲となったのが鳴りもの入りで発売された『ニューヨーク炭鉱の悲劇』でした。続いて発売された2枚目のシングルが『ラヴ・サムバディ』。日本ではこの順番が逆になって、事実上の日本上陸作がこの『ラヴ・サムバディ』になりました。

この時期のシングルについては、1970年代初頭のインタビューでモーリスが面白いエピソードを語っています。なんでもイギリス進出について人に占ってもらったところ、「1枚目のシングルは大ヒットはしないけれど、スターとしての地位を確立してくれるだろう。2枚目のシングルはヒットはしないが大勢にカバーされるだろう。3枚目が最初のナンバーワンになるだろう」と予言されたのだそうです。それぞれ『ニューヨーク炭鉱の悲劇』『ラヴ・サムバディ』『マサチューセッツ』にあたるのだ、とモーリスが解説しています。話を面白くする名人だったモーリスの発言ではありますが、うーん、なかなか不思議…。

光がある
決してぼくを
照らさなかった光だ
この人生をぼくは
君と生きたい
生きていきたい

人はいう
何をするにも
やり方というものがあると
でもそれが何になる
君がいないなら
いないなら

頭の中に
君の面影がよみがえる
ぼくの心は決まっている
なぜ君はそんなにわかってくれない
ぼくは夢中だ
こんなにも夢中だ

ぼくは男だ
それがわからないの
ただ君を思って生きている
でもそれが何になる
君なしでは
君なしでは

君は知らない それがどんなものか
ベイビー 君は知らない
それがどんなものなのか
誰かを愛すること
ぼくが君を愛するように
人を愛すること
それがどんなものなのか

君にはわからない それがどんなものなのか
ベイビー 君にはわからない
それがどんなものなのか
誰かを愛すること
ぼくが君を愛するように
人を愛してしまうこと
それがどんなものなのか…

『ラヴ・サムバディ』はニナ・シモン、ジャニス・ジョプリン、ジョー・コッカーなどポップスという枠ではくくれない大勢のアーティストにもカバーされており、“ビージーズ=ポップス”というイメージを持っている人はこの曲がビージーズのものだと知るとびっくりすることが多いようです。その多彩さこそがビージーズのビージーズたるゆえんでもあるわけなのですが。

映画の中ではメロディちゃんに一目ぼれしたダニエル君が苦手な競走で、彼女の面影を胸に頑張ってなんと一位でゴールしてしまう、というシーンに使われていました。おっとりした雰囲気のダニエル君の走り方がいかにも「運動が苦手そう」な感じ(失礼!)でほほえましかったです。「人を愛すること」がいかに生きていく力になりえるか、ということですね。懸命に走るダニエル君の脳裏にメロディちゃんの面影が蘇える場面も、ほんと、歌の通りです。

1970年代半ば、名アルバム『メイン・コース』からの第一弾シングル『ジャイブ・トーキン』が全米ナンバーワンに輝き、ビージーズは「ディスコ」に方向転換したと言われました。けれども本人たちはその前から一貫して「ブルーアイドソウル」「白人のR&B」(あ、いえ、バリー&ロビンではなく、リズム&ブルースです)のバンドであると自負していたようです。初期の作品中でそれがもっともよく表れた曲のひとつがこの『ラヴ・サムバディ』といえるでしょう。

言葉使いもシンプルでタイト。無駄がなく、本当に決まりすぎるくらい決まっています。リフレインの素晴らしさはもちろんですが、個人的には“I’m a man(ぼくは男だ)”“ Can’t you see what I am?(ぼくが男だとわからないの?)という直球ストレートのアピールが気に入っております。

英語の歌詞はこちら。もともとはバリーの素晴らしいリードが聞ける曲ですが、近年ではロビンもライブで見事なまでに感情がこもったバージョンを披露しています。ここでは2006年2月にフロリダで行われたチャリティイベントのためのリハーサルから、ふたりの共演バージョンへのリンク(YouTube)をご紹介しておきます。心に響くソウルフルな名演です。

 

© 2009 - 2024 Bee Gees Days. 当サイト記事の引用・転載にあたっては出典(リンク)を記載してください。

おすすめ

error: 記事内容は保護されています。