非常に良質のポップス:ロビン・ギブ『フィフティ・セント・キャサリンズ・ドライヴ』アルバムレビュー

ロビン・ギブに8つ星!
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ロビン・ギブのアルバム『フィフティ・セント・キャサリンズ・ドライヴ』のレビューを、ビージーズの大ファンである英国のミュージシャンRobin Settyさんが書いてくださいました。まず最初にどのような立場で書かれたレビューかということが明確にされています。

 

このアルバム評はなるべく客観的に書こうと思っている。どういう状況で発表されたかという点については距離を置いてみたい。

この点については同感です。結局のところ、客観的に”作品”としての価値を論ずることこそが、ロビンの才能とアーティストとしての業績に敬意を払う唯一の道ではないかと考えます。

このアルバムはコンセプトに問題があった『マグネット』に比べてはるかに重要な作品だと思う。その魅力を知るのにそんなに時間はかからないはずだ。数回も聴けば好きになる。聞いたとたんに忘れられなくなるようなびっくりするほどパワフルなサビがいっぱいある。気取らないポップス音楽で、それ以上でもそれ以下でもない。しかもこれが非常に良質のポップスなのだ。
最後のビージーズのアルバムで「ロビン・ギブ」の曲を担当したのと同じプロデューサーがプロデュースしているのだが、プロダクションはいまいち弱い。アルバム『This Is Where I Came In』に見られたような面白いプロダクション上の手腕のあれこれはあまり見うけられない。これは故意かあるいはそれほど時間をかけられなかったのか。

ロビンの声も以前ほど「ユニーク」ではない。 しかしこれは『E.S.P.』以来の傾向で、ビブラートも控えめなら、鼻にかかった感じも少なくなり、ずっと純粋で同時にやや低音になっている。「ロビン」らしさが減ったと感じる人もいるかもしれない。個人的にはこの方が好きだが、『マグネット』より弱いかもしれない。声がしゃがれるときがあるが、その方が感情がこもって感じられるし、これはわざとだと思う。
ほかにも面白いと思った点を挙げておく。

アラン・フリーマン・デイズ」は初出時にシングルにするべきだった曲だ。見事なアコースティックポップの感覚があり、テーマだけからいってもラジオでかなりかかったはずだ。
私はいわゆる「R&B」ファンではないが、「チェリッシュ」は『マグネット』に入っていたR&B曲のすべてを凌駕する出来栄えで、ロビンもばっちりのっている。「ブロークン・ウィングズ」は、これも個人的にあまり好きなジャンルではない(もっとも「プロミス・ジ・アース」はほんとに好きだ)とはいえ、強力なダンスソングだ。それから最後のシンセの音はアルバム『シークレット・エージェント』からとったんじゃないだろうか! 以前のロビン・ギブのアルバムを話題にしたところで、「ワン・ウェイ・ラヴ」のコーラスを歌うロビンを聴いているとアルバム『ハウ・オールド・アー・ユー』を思い出す。ただ残念なことにこのボーカルはデモなので、バースの部分がものたりない気がする。ほんとに良い曲なのでその点が残念だ。1980年にロビンがジミー・ラフィンに提供したアルバム『サンライズ』の曲を彷彿とさせる。
このほかに出色の曲は:

デイズ・オブ・ワイン・アンド・ローゼズ 」はアルバムの冒頭を飾る美しい曲。せつなく内省的な曲で 「エラン・ヴァニン」風のバグパイプのサウンドが聞こえて、アルバムタイトルが喚起する雰囲気にぴったりだ。

ドント・クライ・アローン」 は『タイタニック・レクイエム』からの曲で、エレクトリック系の曲がそろったなかで1曲は本物のオーケストラを使った曲があってうれしい。

サンクチュアリ 」はアルバム中で一番革新的な曲じゃないかと思うけれど、とても元気な感じがあって、聞いていくうちにますます明るい気分にしてくれる。
特に弱い曲はないと思うが、完成した曲が16曲も入っているのだから、「アニヴァーサリー」「アヴァランチ」「ソリッド」「インスタント・ラヴ」はなくてもよかったかも。「インスタント・ラヴ」は一番好みでない曲だ。RJのボーカルが入っているせいではない。RJのボーカル自体は悪くないと思う。ただコーラス部分はやや退屈だ。それに「ソリッド」の歌詞はちょっと…ソリッド(中身がある)とはいえない気がする!

一部の歌詞はやや弱いとしても(「ラジオ・ルクセンブルグでマジックが生まれる」という一節には抵抗がある)、最後の曲「オール・ウィ・ハヴ・イズ・ナウ」の歌詞は素晴らしいの一語につきると思う。この素晴らしさ、曲を取り巻く状況、そのために曲が私にとって持つ意味は、言い表しようがないと思うほどだ。すでに20回は聞いたと思うが、いまだに「ぼくたちには今しかない/時空を超えて飛びながら/ぼくたちはただの訪問者であり/決まった運命などありはしない」というところでは首筋がぞうっとする。まだこの曲を知って間もないが、これは自分にとってはギブ兄弟の作品中で一番のお気に入りになるのではないかという気がする。

そこで10点満点でいうと…少なくとも8点。
最後にひとこと。ロビン・ギブの最後のふたつの仕事が『フィフティ・セント・キャサリンズ・ドライヴ』と素晴らしい『タイタニック・レクイエム』であったことから、彼がいかに信じられないほど多彩な才能の持ち主であったかということがわかる。

このレビューはファンの間でいわゆる「Wordsメーリングリスト」として知られるWords and Music Fans of Brothers Gibb に投稿されたもので、作者の許可を得て全文を転載しました。

(Thanks: Robin Setty, Words Mailing List)

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