ロビン・ギブとロビン・ウィリアムズ ― ふたりのロビンが出会ったとき
2014年8月11日、世界は名優ロビン・ウィリアムズの突然の早すぎる死のニュースに衝撃を受けました。鬱病で苦しんだ末に自宅で縊死という悲報に接して、スクリーンで見るコメディアンとしての顔の陰にあった繊細で悲しい心の肖像を見る思いがします。アルコール依存症にも苦しんだというウィリアムズは、「ビージーズきってのコメディアン」とも言われたモーリスを思わせもします。人を笑わせ、なごませるやさしさは、傷つきやすい心のあらわれでもあったのかもしれません。
あまり知られていないことですが、もうひとりのロビン、ロビン・ギブはロビン・ウィリアムズのファンでした。「ビージーズで一番面白いやつ」(バリー談)でもあったロビンは大のコメディ好き。ウィリアムズの作品を楽しんで見ていたそうです。
ウィリアムズの死の知らせが流れてすぐ、ドゥイーナ夫人はこんなツイートを発信しました。
ロビンはロビン・ウィリアムズが大好きでした。あるとき飛行機で移動中にふたりが即興で「グーン・ショー(訳注:イギリスのコメディ番組、ギブ兄弟に大きな影響を与えたと言われています)のコントをやったのを覚えています。本当に残念です。
Robin loved Robin Williams. I remember them both doing an impromptu sketch of The Goon Show on a plane journey. A terrible loss. Dwina.
(8月12日)
そこで別件で夫人と話したときに、そのときのことを詳しく聞いてみました。
ジョ ン・トラボルタの誕生パーティ(たぶん50歳の)に出席するためにロスから乗ったニューメキシコ行きの飛行機でロビン・ウィリアムズと乗り合わせたんです。ファンだったロビンはロビン・ウィリアムズが乗っていると知って席まで挨拶に行きました。それまで何度か会って面識はあったのですが ゆっくり話したことはなかったようで、話しているうちにふたりとも『グーン・ショー』のファンだったことがわかり、いきなりロビンが番組中で披露されたコ ントのひとつのセリフを言い始めたんです。すると、なんと、ロビン・ウィリアムズの方もちゃんとセリフを覚えていて、飛行機の通路のところでふたりでコン トをひとつやってしまったんです。居合わせた人たちはやんやの喝采。ロビンが『グーン・ショー』ファンとは知っていたけれど、まさかセリフを暗記していたとは! びっくりしました。
えー、じゃ、飛行機の中でコントをやってしまったんですね?
それと空港に着いてからも。
じゃ、同じコントを2回やったんだ?
いえ、違うコントを。2つやったんです(笑)!
とはなんとまた! いやあ、その場に居合わせた人たちはラッキーでしたね。
ミ ソロジー・ツアーのステージでバリーは「ロビンは愉快にジョークを言っているかと思えば、一転して悲しそうになって、両極端の顔があった」と語りました。 話していると必ず笑ってしまうとても愉快な人でしたし、ジョークの間(ま)が抜群でとても楽しい話し手でした。でも同時にロビンの心の底には澄んだ水のよ うな悲しみが湛えられていると感じたことも一度ならずありました。
同じ名前だったこともあって、このふたりにはもうひとつ面白いエピソードがあります。2012年5月21日(日本時間)にロビンが亡くなったとき、「ロビン・ウィリアムズが撮影中の事故で亡くなった」という誤報がツイッターで流れたそうです。ツイートを見た女優のゴールディ・ホーンが真に受けてリツイートしてしまったこともあって、誤報がネット世界を駆け巡ったそうですが、結局間違いだったとわかり、ゴールディ・ホーンは「ロビン・ウィリアムズは生きています! 亡くなったのはビージーズのメンバーのロビン・ギブです」とツイートしたとのこと。ユーモアのセンスたっぷりだったふたりのロビンはきっとこの話を笑ってくれた、楽しんでくれたと思います。「残念ながら死んだのはウィリアムズの方じゃなくてぼくだったんだよ」なんて言っているロビンのいたずらっ子のような笑顔が見えるような気がしますね。
(Thanks: Dwina Gibb)
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