続・バリー・ギブinボストン(ボストン・ヘラルド紙レビュー)

涙、涙の「ニューヨーク炭鉱の悲劇」(2014年5月15日、ボストン)

ボストン・ヘラルド紙(オンライン版2014年5月16日付)に掲載されたバリーのボストン公演の感動的なレビューをご紹介します。

バリーがビージーズのクラシック「Lonely Days」を3曲目に歌い終わったところで、TDガーデンに集まった年経た観客は席から立ち上がって歓声をあげはじめた。「バリー、バリー」の合唱はいつ 果てるともしれず、この長いオーベーションにバリーは最初はニコニコしていたが、やがて泣き始めた。巨大なスクリーンに映るバリーの頬を伝う涙を見た観客の バリー・コールはいっそう高まっていった。まさに「It’s just emotion that took us all over(感極まった)」わけである。

バリーのツアー初日となった木曜の夜のガーデンには愛とエモーションがあふれていた。ふたごのロビンとモーリスはすでに亡く、末っ子のアンディは1988年に30歳の若さで逝去している。

それでも悲しい夜ではなかった。むしろポップミュージックの世界に燦然と残る数々のヒットを生み出したファミリーをたたえ、オーストラリア、イギリス、アメリカとたどったビージーズの栄光の旅路をたたえるコンサートだった。

特にフィーバー時代のヒットが演奏されると踊る観客が目についた。『サタデー・ナイト・フィーバー』 が生んだ熱狂は愛されると同時にからかいの対象にもなったわけだが、バリーとその素晴らしいバンドは、「Jive Talkin’」「You Should Be Dancing」でのっけから観客を熱狂させた。モーリスとロビンが務めたハーモニー役を担ったのは女性シンガー三人。バリーのファルセットは最高の 出来で、「Stayin’ Alive」の最後では音を長くひっぱってこれを存分に示してくれた。高音部で苦労していたのはブルース・スプリングスティーンのカバー(なんと!)「I’m On Fire」を披露したときぐらいだろうか。ブルースがオーストラリアのコンサートで「Stayin’ Alive」を披露したので、バリーが「お返し」したわけだ。

2時間を超えるコンサートでバリーとバンドは全33曲を披露、ビージーズの全キャリアを網羅してみせた。

一 番歓声があがったのが60年代、70年代のポップスヒットで、それも当然といえる。「To Love Somebody」「I’ve Gotta Get A Message To You」「New York Mining Disaster 1941」はいまだ色あせない名曲である。観客から轟くような反応を受けてバリーはまたも涙をこらえていた。「Spicks and Specks」にはハーマンズハーミッツを思わせるようなキャッチ―な魅力があり、あまり知られていない「In the Morning」はバリーのギター一本で始まり、ムーディブルース風にじっくりと聞かせて、コンサート全体のハイライトになった。「How Deep is Your Love?」と「Run to Me」ではハグしたり、こっそりキスしあったりするカップルの姿もあちこちで目についた。「Nights on Broadway」「Night Fever」「More Than a Woman」ではまたまた観客が踊り出した。

他のアーティストにカバーされたギブ兄弟の曲のデュ エットも聞かせどころだった。モーリスの愛娘サミーはボーカリストとして前面で活躍し、ダイアナ・ロスがヒットさせた「Chain Reaction」を熱唱。ベス・コーエンはケニー・ロジャースとドリー・パートンのヒット「Islands in the Stream」やバーブラ・ストライザンドの「Guilty」と「Woman in Love」でバリーと共演した。

サウンドデザイナーの仕事ぶりも特筆に値する。どの曲も歌詞のひとことひとことがはっきりと聞き取れた。またバリー自身もコンサートを通じてずっとステージに出ずっぱりだった。

ファミリーとしての雰囲気は変わらず、バリーの息子スティーヴンはギターを演奏しながらボーカルも披露。モーリスの娘サミーはボーカリストとしての才能を存分に発揮して、特に「How Can You Mend a Broken Heart?」が素晴らしかった。「 (Our Love) Don’t Throw it all Away」はアンディに捧げられた曲だった。

古いホームムービーや楽しそうにふざけあう兄弟たちの姿も動画で登場した。まずオープニングに映し出されたのは「Technicolor Dreams」のモンティパイソン風おふざけビデオ。いちばんせつなかったのは「I Started a Joke」を歌うロビンの古い映像だ。まさに世界中が泣き出した。バリーも泣いていた。すすり泣く観客も多かった。でもそれはビージーズの音楽が呼び起こす幸せな思い出がもたらした喜びの涙である。

バリーは今回のツアーは6都市のみ。ボストンがそのうちの1カ所に選ばれたのは、しみじみ幸福なことだ。

オーストラリア、イギリスとまるでビージーズの軌跡をたどるようにツアーを展開しながら、セットリストが微調整されてきましたが、今回もまたとても練りこまれた内容ですね。やはりアメリカという国を意識しているように思えますが、同時に行く先々の国でビージーズの音楽やパーソナリティがどんなに愛されてきたかを、どのレビューを呼んでもしみじみと感じます。次は日本…ということになるように、少しずつ盛り上げていけると良いですね。イギリス公演にはヨーロッパのプロモーターが見に来ていたそうです。どなたか日本のプロモーターからも足を運んでくだされば、これがどんなにすごい音楽体験かわかってもらえるはず!と信じているのですが。

{Bee Gees Days}

© 2009 - 2024 Bee Gees Days. 当サイト記事の引用・転載にあたっては出典(リンク)を記載してください。

おすすめ

error: 記事内容は保護されています。