今年は『スピリッツ(Spirits Having Flown)』40周年

発売時に英国の音楽誌の表紙を飾ったビー・ジーズ15枚目のスタジオ・アルバム『Spirits Having Flown』
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いかん! このままでは2月が終わってしまう! とあせっていたのですが、ようやく体調が上向いてきたので、まだまだ少しずつではありますが、サイトの更新を再開したいと思います。遅ればせながら、今年もどうぞよろしくお願いいたします<(_ _)>

ビー・ジーズ初のドキュメンタリー映画製作の報など、書くべきことはたくさんあるのですが、時季ネタとしては今年はビー・ジーズ15枚目のスタジオ・アルバムとして全英米でアルバム・チャートのナンバーワンに輝いた『Spirits Having Flown(邦題 ビー・ジーズ/失われた愛の世界)』発売40周年にあたります。2月5日の発売だったことでもあり、やはりサイト再開にあたってもその辺から取り上げたいと思います。

昨年11月に発売された『アルティメイト・ベスト・オブ・ビー・ジーズ』のための資料作りにも協力していただいたアメリカの音楽ジャーナリストでビー・ジーズの研究者であるグラント・ウォルターズさんが関係者に取材して書き上げた長文論考がAlbumismにも登場しました(オンライン版2019年2月3日付)。

上記の記事ついては筆者グラントさんとサイトAlbumismのご厚意で全文翻訳の許可をいただけましたので、近くこのサイトでご紹介いたします。

ただ、この記事長いんだわ~。というわけで病み上がりの身にはちときついので、今日のところは、発売週の1979年2月4日にビー・ジーズ第二の故郷オーストラリアのThe Sun-Herald紙に掲載された「新譜レビュー」の内容を簡単にまとめてご紹介することにいたします。

ビー・ジーズの最新アルバムはフィーバー度は落ちるけどやっぱりイケてます

なにしろ『サタデー・ナイト・フィーバー』があれだけバカ売れしたのだ。札束を数えるあいまにビー・ジーズの胸に去来する不安があるとすれば、それはただひとつ…。「同じクオリティの高さを維持した次のアルバムを制作しなければならない」というそのことに尽きる。
さて、その次のアルバムがいよいよ明日発売される。しっかし変なタイトルではある。『Spirits Having Flown』だって!(訳注 アルバムの邦題はシングルにもなった『Too Much Heaven』の邦題からとられています。この邦題もかなり変ですけどね)だが、このニュー・アルバムを聴くかぎり、バリー、モーリス、ロビンの三兄弟はみごとにこの難しい仕事をやり遂げたようだ。

このニュー・アルバムはビー・ジーズにとって映画のサウンドトラックではないレコードとしては2年ぶりのもの。シングルヒットしそうな曲が何曲もあり、これまでのビー・ジーズの作品の中でももっとも変化に富んでいる。

『サタデー・ナイト・フィーバー』のサントラは良質のディスコ音楽だったが、このアルバムでは90分を通してディスコが堪能できるというわけでもない。ソフトなハーモニーが聴ける「失われた愛の世界」、せつせつたる「アンティル」、ブルース調の「ストップ(アンド・シンク・アゲイン)、「サーチ、ファインド」や「哀愁のトラジディ」のようなディスコ曲。
ディスコ・ファンはちょっとがっかりするかもしれない。この新作アルバムには『サタデー・ナイト・フィーバー』大成功の主要因になったビー・ジーズの良質なディスコ曲がそんなに入っていないのだ。

けれどもグループのソフトなハーモニーのファンは明日の朝地元のレコード店に並んで買うべし。

このアルバムのポイントは、素晴らしいハーモニー(通常のビー・ジーズよりバリー・ギブのソロが多いけど)、そしてインストゥルメンタルの多様さである。

サイド1の方が良い。
まずトップに来る「哀愁のトラジディ」。『サタデー・ナイト・フィーバー』レベルに達した最高のディスコ・ナンバーで、自称トラボルタたちがこの曲にあわせて地元のディスコで踊りまくることだろう。「恋のナイト・フィーバー」にテンポが似ている。
続いて「失われた愛の世界(Too Much Heaven)」。クリスマス前に最初のシングルとして発売され、ラジオでもおなじみの曲だ。ソフトな曲。このアルバムにはソフトな曲が多い。

やはりソフトなダンス・ナンバーの「ラヴ・ユー・インサイド・アウト(Love You Inside Out)」は先の2曲ほどは記憶に残らない。「リーチング・アウト(Reaching Out)」はこれもソフトなヒット性の高いナンバーで、バリーのあの声のキンキン度を聴ける。

タイトル・トラックの「愛のパラダイス(Spirits Having Flown)」が個人的なお気に入りだ。非常にキャッチ―なメロディで、ラジオでウケそう。

サイド2のトップは「愛の祈り(Search, Find)」。良質のブラスセクションとボーカル・ハーモニーが聴けるディスコ曲。ディスコでかかったらみんながノレそうな曲だが、個人的にはいまひとつ。

「ストップ(Stop (Think Again)」はほぼバリーのソロボーカルによるブルース風の曲で、バリーがキンキンしたファルセットでベッシー・スミスのものまねをしている。

サックスがうまく入っているが、全体にバックの楽器使用はかなりおさえめ。

「リヴィング・トゥゲザー」はチャイコフスキーを思わせる出だしの曲で、フルオーケストラつき。みごとなボーカルが聴けるすぐれたダンス・トラックだ。

「アイム・サティスファイド」もディスコ風の曲で、強いビートにソフトな音楽。だが、あまり印象に残らない。

「アンティル」はアルバムを締めくくる短い曲。ソフトで物悲しい曲だが、これから盛り上がるのかと思ったとたんにぷつりと終わってしまう。

チャンネル7のDJのダニー・サザーランドは、このアルバムを「信じられないほど素晴らしい」と言っている。

サザーランドはビー・ジーズを全盛期のビートルズと比較する。「ビートルズ同様に、ビー・ジーズもアルバムごとに微妙に路線変更をしている。最初はちょっととっつきにくいが、いったんハマると、めちゃくちゃキャッチーでコマーシャルなアルバムだ」。

アルバム『Spirits』は『サタデー・ナイト・フィーバー』と同じぐらい大ヒットすると思いますか? 「今回は映画がないので、あれほど大ヒットはしないだろうけれど、そうなっても当然の出来栄えだよね」

サザーランドいわく、このニュー・アルバムでは『サタデー・ナイト・フィーバー』よりもグループのハーモニーが前面に出ている。彼のお気に入りの曲は、9分もある「哀愁のトラジディ」。この曲は「マッカーサー・パーク」のような古典になるんじゃないかという。
その他で印象に残ったのは「アイム・サティスファイド」「アンティル」「愛の祈りだそうだ。

サザーランドは、このアルバムでビー・ジーズが音楽業界の友人たちの手を借りている点にも注目してほしい、という。最近オーストラリア・ツアーをしたばかりのシカゴのホーン・セクションの3人も何曲かに参加している。

From “The Bee Gees’ Latest Album Less Feverish But A Goer” – Jive Talk by Gavin Green

このタイミング、まさにビー・ジーズは「飛ぶ鳥を落とす勢い」でした。ですから、このGavin Greenさんという筆者がべた褒めではなく、中の何曲かについて「あまり印象に残らない」と書いたりしているのは実はけっこう勇気があったのではないかと思います。

個人的には、チャンネル7の看板DJだったダニー・サザーランドのコメントは、かなり自分の意見とは違うなあと思います(まあ、人それぞれですからね)。あくまで個人的にですが、記事の筆者であるGreenさんの意見の方にわりと賛成かな。

しかしあのタイミング、あのプレッシャーの中でこれを創り上げ、長大な全米ツアーを敢行したのは、本当にすごいことです。当時、フリートウッドマック(『Rumours』)、イーグルス(『Hotel California』)、ピーター・フランプトン(『Frampton Comes Alive』)のように、毎年のようにその年を代表するメガヒット・アルバムが生まれる風潮がありましたが、それぞれのアーティストが次回作について周囲の期待から来るプレッシャーに苦しんだといわれています。イーグルスのレコード会社が、「新曲ができるようにRhyming Dictionaryまで送ったのに」とぼやいている記事をどこかで読んで非常におかしかったのを覚えています。英語の歌詞はこのrhyming(韻)が重要で、スモーキー・ロビンソンがライミングの名人だったとか言われていますが、walkとtalkとか、loveとdove(鳩)いうアレですね。とにかく、記録破りのヒットを飛ばしたビー・ジーズにかかったプレッシャーも相当なものだったと思われます。40周年の今年、ビー・ジーズのキャリアの中でも、よくも悪くももっとも白熱した時期にかくして発表されたこのアルバムの評価、続いて行われたツアーのレビューその他を順次ご紹介していきたいと思います。

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