ジャック・ワイルド、映画『小さな恋のメロディ』とビー・ジーズを語る

ジャック・ワイルドの自伝
It’s A Dodger’s Life
(イッツ・ア・ドジャーズ・ライフ)

<クリックすると拡大されます>
a=

「若葉のころ」(5月1日)といえば、やはり映画『小さな恋のメロディ』。トム・オーンショー役のジャック・ワイルドは惜しいことに2006年に53歳で亡くなっていますが、生前書いていた自伝『It’s A Dodger’s Life 』(Kindle版)が夫人の手でまとめられて2016年に出版されています。

その中で語られているビー・ジーズと映画『小さな恋のメロディ』撮影時のエピソードなどを、簡単にまとめてご紹介します。中でも『メロディ』の撮影エピソードは読んでびっくり!でした。

ビー・ジーズについて書かれているのはほんのわずかではありますが、その内容はなかなかに印象的。

映画ができあがって半年ぐらいして、ナイツブリッジにある試写劇場で最初のカットのプライベート試写があった。父と母も僕と一緒に見に来てくれた。(大好きだった)ビー・ジーズが来てくれただけじゃなくて、(素敵だなあと思っていた)ルルまで来てくれてた上に、なんと、リンゴも来ていたんで、ほんとにうれしかった。すごいよ! リンゴ・スターに会えるなんて! 自分でも何を言ったか、何を言われたか覚えてないんだけど、とにかく会ったんだもんね。で、試写の後で、家に帰る前にトイレに寄ったら、中にいたんだよ、ビー・ジーズが。ビー・ジーズと一緒に用を足したんだぜ。すごい夜だった!

『小さな恋のメロディ』のことをワイルドは、「ハマースミスのロミオとジュリエットみたいなもの」だと書いています。映画『オリバー!』で共演したマーク・レスターと「また一緒だから楽しいだろうし、音楽がビー・ジーズときてる。これは成功まちがいなしだ」。

その他、『メロディ』関連で面白いと思ったのは―

〇トム・オーンショーがお祖父さんと住んでいたという設定の建物はテムズ川の南岸にあって、ネズミなどが出る不潔な場所として当局に目をつけられていたそうです。あれはセットじゃなかったんですね! それで「シラミとかがいるといけないから撮影中には毎日お風呂に入ってくれ」と言われて驚いたそうです。しかし、と言うことは、ジャック・ワイルド君はふだんはたまにしか風呂に入ってなかったのか?

 

〇ビー・ジーズの「ギヴ・ユア・ベスト」をバックにトムとダニエルがソーホーに遊びに行く場面。あれはほとんど即興で撮られたそうです。ストリップクラブにトムが入ろうとしてボディガードみたいなおじさんにつまみ出される場面については、「学校の制服を着てたからだと思いたい。僕があほくさいぐらい年より若く見えたからじゃないといいなあ」と書いてありますから、あれは演技じゃなかったんですね!(びっくり!)

 

〇その他、トムが大道芸人のおじさんのうしろで踊って怒られる場面も即興だそうです。あの大道芸人の方は地元では知られていて、映画が撮影されてから12年後に亡くなった時にはたくさんの俳優が彼の葬儀に参列したそうです。「僕たちのささやかな映画の中に彼の姿が永遠にのこっていると思うと嬉しい」とジャック・ワイルドは書いています。

 

〇眠っている浮浪者のようなおじいさんの心音を聞こうとして怒られる場面も即興だそうです。

 

〇映画の中でトムがタバコを吸う場面があったけれど、実はもっと小さなころからタバコを吸っていたワイルドは、それをご両親には内緒にしていたそうで、「ここでカミングアウトすべきかどうか」悩んだそうです。

しかしああいう場面が即興だというのはすごいですね。ジャック・ワイルド君(と呼んでしまう)の動きがいい感じに誇張されていて絵になっていて、すごくおかしいので、劇場では笑い声があがっていました。後年、喉頭がんの手術で声帯を切除して、あの魅力的なハスキーボイスを失ったワイルドは、それでもパントマイムで舞台に立ち続けて、その動きで観客を魅了し続けたということですが、それも頷けます。

最後に彼が来日した時のエピソード。空港にファンが詰めかけて大騒ぎになり、「すごくこわかった」そうですが、最初集まっているファンを見たときには、「へえ~、この飛行機に誰か有名人が乗ってるんだ~。誰だろう?」とまるで他人事。まさか自分のファンがそんなにいるとは夢にも思っていなかったとか。

この自叙伝の帯の惹句にはこうあります。「ジャックの語り方は正直で、いたずらっ子のような魅力があり、すがすがしいほど自己憐憫の念が欠如している」。 多くの子役スターの例に漏れず、成年後は役に恵まれたとはいえないジャック・ワイルド。20代前半にはすでにアルコール依存症で体を壊しており、晩年は魅力的な声も失い、容貌も変わって、それでも舞台に立ち続けたジャック・ワイルド。いくらでも悲しい自伝を書けたでしょうが、そのトーンは最後まで明るくてちょっと生意気で、まるでトム・オーンショー君のようです。

最後におまけでトリビアをひとつ。ファンの方ならご存知でしょうが、子どもだった彼を見出したエージェントはあの(!)フィル・コリンズのお母さんだそうです。(知らなかった!)フィル・コリンズもジャック・ワイルドのように『オリバー!』の舞台でドジャー役を務めた経歴を持っているのですね。

関連記事 訳詩コーナー「ギヴ・ユア・ベスト」

{Bee Gees Days}

© 2009 - 2024 Bee Gees Days. 当サイト記事の引用・転載にあたっては出典(リンク)を記載してください。

おすすめ

error: 記事内容は保護されています。