【2017年8月】「初期のビー・ジーズを聴いてみよう」(The Z Review)

TheZReview.comより

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アートと時事問題を論じるサイト「The Z Review」のコラムに「初期ビー・ジーズを聴いてみよう」という記事が登場しました。

以下に記事(2017年8月5日付)の内容を簡単にまとめてご紹介します。(この記事が掲載された「あのシングルは無視していこう(Ignore the Single)」という連載コラムは、「一発屋などと呼ばれるアーティストを取り上げ、アルバム・トラックなどあまり知られていない曲を論じる」というものです)

つまり、ビー・ジーズはあまりこのコラムの目的には適さないチョイスではある。一発屋どころか、シングルでもアルバムでもヒット作にはことかかないし、なんたって世界でもっとも人気があったグループのひとつなのだ。

彼らの場合には、あれだ、「あの曲以外にもいろいろといい曲があるんです」路線ではなく、「あのアルバム以外にもいろいろといい曲があるんです」で行くべきだろう。そのアルバムとは言わずと知れたあの某サントラである。

今日、ビー・ジーズといえば、「ステイン・アライヴ」を歌ったディスコ・バンドだと思っている人が多い。確かに、彼らのディスコ時代は良い。どんな形であれ、ビー・ジーズのディスコにケチをつける人がいれば私には徹底抗戦する準備がある。しかし、ビー・ジーズの初期の曲を知っている人が比較的少ないというのは、まったくもって「トラジディ」なのである。

そこで1966~1974年のビー・ジーズの比較的認知度が低いと思われる曲の中から選んで下に挙げてみた。中には、珠玉のバロック・ポップのシングルとして、ビートルズと同じレベルに達しているものもある、というのが私の意見だ。なかなか大胆な意見だと思うかもしれないが、私はそう信じているのだよ。

スピックス・アンド・スペックス」(『Spicks and Specks』1966年)

ラヴ・サムバディ」(『ビー・ジーズ・ファースト』1967年)

マサチューセッツ」(『ホリゾンタル』1968年)

ランプの明り」(『オデッサ』(1969年)

想い出を胸に」(『キューカンバー・キャッスル』1970年)

ロンリー・デイ」(『ロンリー・デイ(トゥー・イヤーズ・オン)』1970年)

傷心の日々」(『トラファルガー』1971年)

ラン・トゥ・ミー」(『トゥ・フーム・イット・メイ・コンサーン』1972年)

サウス・ダコタの朝」(『ライフ・イン・ア・ティン・キャン』1973年)

失われた愛」(『ミスター・ナチュラル』1974年)

おー!このコラムを書いていらっしゃるDaniel Bukszpanさんという音楽ライターの方は、ヘヴィメタやニューウェイヴ系百科などを著しているそうですが、寡聞にしてこれまで存じませんでした。しかしなんかまことに良さそうな方ではありませんか!

けれども「知られざる名曲」として挙げられた曲の中にミリオンセラーが何枚も入っていて、ほとんどがシングル・ヒットもした曲だというあたりに、ビー・ジーズというグループのすごさと難しさが表れている気がします。(難しさというのは難解さという意味ではなく――まあ、ある意味もちろん難解ではありますが――位置づけに困るというか、処遇に困るというか、そういう意味です。これだけのグループが、ある意味、現在は不遇であるのは、ひとえにこの難しさのせいかもしれません)

アルバム・トラックで挙がっているのは、最後の2曲、『ライフ・イン・ア・ティン・キャン』からの「サウス・ダコタの朝」と『ミスター・ナチュラル』からの「失われた愛」の2曲のみ。ちなみに、この時代(1973年~1974年)はビー・ジーズがシングル・ヒットに恵まれなかった時代なので、この選曲になったのでしょう。

「サウス・ダコタの朝」は西部劇みたいな設定(遠い異郷の地で流れ者がひとり故郷を夢見ながらさびしく死んでいく…)の美しい曲で、バリーの哀愁に満ちたボーカルがしみじみと聴かせます。納得のチョイスでしょう。『ミスター・ナチュラル』からランクインした「失われた愛」は個人的には意外なチョイス。ちなみにこの邦題は誤訳です。当時のポリドールがつけたものが踏襲されて、ワーナー時代の紙ジャケ再発売にも使われましたが、原題はLost In Your Love(君の愛に夢中)。つまりこの愛はぜんぜん失われてなどいなくて、ラブラブ真っ最中。どうせ、バリーがリンダ夫人に捧げた曲なんじゃないか、と勘繰りたくなるような曲です、はい。

(ちなみに余談ですが、ディスコ時代の美しいヒット「偽りの愛」は、原題が「Love So Right」(真実の愛)なので誤訳ではないのですか、と聞かれたことがありますが、あれは「真実の愛が偽りの愛になってしまった」という内容なので、だいじょうぶ(?)です)

でもこの記事で、どの時代もアルバム・トラックを選んでくれていたら、それはそれでディープすぎるかもしれないけれど、ものすごく面白いリストになった気はします。さて、初期のアルバムから1曲ずつ選ぶとしたら、あなたならどの曲を選びますか?

それにしても、Universal/Capitolにもどったことで、ワーナー時代に担当者の熱意で実現した紙ジャケ・シリーズなどが廃盤となり、こうしたオリジナル・アルバムのほとんどが現在では日本盤で手に入らなくなってしまったのは、なんともさびしい悲しいことです。

{Bee Gees Days}

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