訳詞コーナー:『夏と秋の間に』
バリーとモーリスのふたり組時代のビージーズの曲を何曲かとりあげましたので、この辺で同じころソロアーティストとして活躍中だったロビンの曲をとりあげたいと思います。
『夏と秋の間に』は全英シングルチャートで2位という大ヒットを記録したロビンのソロデビュー・シングル『救いの鐘(Saved by the Bell)』、2枚目の『ミリオン・イヤーズ(One Million Years)』に続く、第一期ソロ時代のロビンの3枚目にして最後のシングル。
1970年に発売され、特にロビンが根強いファンを持つドイツではスマッシュヒットを記録しました。日本でも大きなチャート入りは逃しましたが、親しみやすい曲調で、よくラジオでかかっていましたね。
秋風と共に去った夏の恋の思い出を軽快なテンポで歌って、ロビンの曲としてはわかりやすい叙情的な作品です。日本では『夏と秋の間に』というきれいなタイトルになりました。
原題は『August October』、つまり『八月 十月』です。今ならほぼ確実に『オーガスト・オクト―バー』になってしまいそうですが、当時は日本盤のタイトルもなかなかこっていましたよね。『愛と悲しみの八月と十月』とか『過ぎさりし愛の八月と十月』てなタイトルにならなかったことをば感謝いたしましょう。
秋の金曜日 風が吹いていた
七月 九月 君を知った
いま ぼくは砂丘に座り
ぼくたちの歌を海に向かって歌う
八月 十月
四月たけなわ 十一月 五月
誘われるままに君は去り
いま すべては終わった
八月 十月 草は萌え
空は青く 君を思う
いま この窓から見やれば
変わらぬこの世の営みが見える
八月 十月
四月たけなわ 十一月 五月
誘われるままに君は去り
いま すべては終わった
いま すべては終わった
この歌では月の名前が重要なモチーフになって、言葉遊びのように時間とふたりの関係の推移を表しています。思い出の時間の中には夏と海と歌があって、草は萌え、命が輝いています。タイトルの八月はこの輝く過去を、十月は独り取り残された現在を表して、過去形と現在形が混在しています。「君を思う」がしっかりと現在形であるのも泣かせるところですね。
英語の歌詞はこちら。この曲が含まれるロビン初のソロアルバム『救いの鐘(Robin’s Reign)』は現在では廃盤ですので、ここではYouTubeへのリンクをご紹介します。
なお、面白いことにロビンはこの曲のイタリア語バージョン『Agosto Ottobre』(YouTube)も歌っています。そういえばなんとなくカンツォーネ風の歌ですよね。
このイタリア語版は原詩にほぼ忠実にイタリア語訳されたもので、『Salvato dal campanello』(イタリア語でSaved by the Bell)という非公式盤に収められています。
ロビン自身は英語しかできないので、外国語を歌うときには音で覚えて歌うのだそうです。この歌のイタリア語も英語圏の人らしい訛りがそれほどなく、なかなか堂に入っています。ロビンは日本で「ありがとう」を覚えようとして苦労し、ようやく言えたのが「ハリケット」だった(爆)という逸話がありますから、このイタリア語バージョンはなかなかの健闘と言えるでしょう。
最近ではピーター・ジョン・ヴェッテーゼなどと組んでソロのレコーディングも行っているロビンですが、その中にはギリシア語のコーラスが入った曲もあるということです。なんでも担当プロデューサーのイオシフィディス・サバスがギリシア出身だったために、このアイディアが出たのだとか。詳細はまだ発表されていませんが、なんだか楽しみな情報ですね。
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