「若葉のころ」(Melody篇)

1971年6月26日に有楽町のニュー東宝で初公開され、あれよあれよという間にロングランになった映画「小さな恋のメロディ」。パステルで書かれた手書き文字風のタイトルもやさしいイメージにぴったりでした。

夜明けのロンドンを背景にフェアリーテール風の歌詞が美しい冒頭の「イン・ザ・モーニング」から始まって、ビー・ジーズの音楽が全編に流れ、ファンにとっては歓喜の極みのようなこの映画。

中でもストーリーととけあって見事な使われ方をしていたのが、この「若葉のころ」。ダニエル君とメロディちゃんがまさに「若葉のころ」の緑輝く墓地を手をつないで歩く初めてのデートシーンに流れます。

「バリー篇」ではトム・ジョーンズ・ショーでのライブをご紹介しましたが、こちらは同じバリーが歌うオリジナルバージョン。

ダニエルとメロディの物語は映画の製作者デイヴィッド・パットナム夫妻の実話に基づいているというのは有名な話ですが、脚本のアラン・パーカーはビー・ジーズの歌詞のイメージを元に執筆したということなので、歌詞に登場するリンゴが画面でも重要な小道具になっていたりしてニクイですね。この場面を見るとリンゴを丸かじりしたくなります。(シャリシャリとかじゃなくて、バリバリという感じで豪快に食べているのは、やはりバリーに敬意を表しているせい?)

「若葉のころ」は時の流れの中で失われた幼い日の純粋な思いを愛おしむ歌。ビー・ジーズ版の「別れても好きな人」(古いなあ…)でしょうか。

時は流れ、新たな出会いがあって、今はツリーを見上げた時代は帰らない。「それでもふたりの愛は決して死なない」と歌う「若葉のころ」をこの初恋物語の光揺れるふたりの姿と重ねて聞くとき、大人の観客の胸にはせつない思いが去来します。けれども「このふたりの”今”もいつかは過去になる」とか「初恋は実らない」というような否定的な意味ではなく、「だからこそ愛おしい”今”」、誰の人生にもある一番輝かしい時間への賛歌、イノセンスへのオマージュとして「若葉のころ」は使われているのでしょう。

メロディ: 「愛する妻のエラ・ジェーン、ここに眠る。幸せな50年間をありがとう」。「ヘンリー・ジェイムス・マクデビッド、妻のエラと共に眠る」……奥さんが亡くなってからほんの2カ月でこの人も亡くなったのね。

ダニエル: きっとすごく愛してたんだね。

メロディ: 50年の幸せ…か。50年ってどのぐらい長いのかしら?

ダニエル: 休暇抜きで150学期分だ。

メロディ: そんなに長くわたしを愛せる? 無理よね。

ダニエル: もちろん愛せるよ。もう1週間も愛してるじゃないか。

50年…150学期もの間、素晴らしい音楽で世界を幸せにしてくれてありがとう、ビージーズ! (Thank you for fifty years of happiness!)

{Bee Gees Days}

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