訳詞コーナー:「グレイ・ゴースト(Grey Ghost)」

日本に捧げられた「Grey Ghost」
日本に捧げられた「Grey Ghost」

「Grey Ghost」は2006年にバリーが息子のスティーブン・ギブ、アシュリー・ギブと共作した曲で、2007年にレコーディングされ、2011年末にバリーのサイトでダウンロードシングルとして発売されました。

すでにご紹介した(バリー・ギブ、日本に捧げる新曲とコンサート情報)通り、バリーは「素晴らしい日本の人たちに捧げます。穏やかに再建が進み、愛する人たちを失った悲しみが少しでも癒やされますように」とサイトで発表して、この曲を日本に捧げてくれています。

シタールを使ったアジアンな雰囲気で、2006年に書かれた曲であることから、もともとは2004年のスマトラ沖地震による津波について書かれた曲ではないかとも言われています。

一瞬、初期のビージーズを思わせるところもあり、個人的には初めて聞いたときに出だしで「イン・ザ・モーニング」をちょっと思い出しました。静かな曲調は悲しい物語を語る灰色の幽霊のひそやかな足取りを思わせますが、間奏部分に歌い手の決意を聞くことができます。

 

 

グレイ・ゴーストが
部屋を歩いている
やさしく慈愛深い母よ
むごたらしい殺戮よ
その声は誰にも届かず
彼女は去っていった

深夜
彼女は闇を歩き
苦しい闘いを語る
小さな顔 顔 顔
人も場所も
すべてがひとつに

生き延びた人がいたこと自体
奇跡というべきか
あの聖なる日
河が押し寄せ
私たちは太陽のために祈った
そしていま心が死なないように
求められているのは信念の行為
私はなんとか戦えそうだ
がんばるしかない

グレイ・ゴーストが
泣き始めた
夜は短くなりつつある
マリアの娘は
水に落ちた
もういない

雄々しき者たちよ
危険のただなかから引き上げられ
どこまで落ちなければならないのか
助けてくれ 見知らぬ人よ
分かつことを拒む狭量なる悪意よ
この日のもとで

人の命は神の御意か
それゆえ灰は立ち上がる
死ぬことがないのは ただ愛のみ
愛は生き続ける
世界に伝えたいことがあるというなら
それが何なのか いまでもわからない
愚か者が歴史を著し
害は成されている

この悲しい
物語は語られる
子どもたちへと語り伝えよう
小さな指 指 指
旋律は消えずに漂っている
そして彼女は行ってしまった

許可を得て英文の歌詞を以下に転載いたします。

Grey Ghost
She walks in the room
Sweet mother of mercy
Bloody murder
Nobody heard her
And then she was gone

Midnight
She walks in the dark
She talks of her struggle
Tiny faces
People and places
All rolled into one

And the fact that anyone survived is
Still a miracle
That holy day the river came
And we prayed for the sun
And that what it takes is the act of faith
To keep the soul alive
I’m equal to the fight it seems
And I’m hanging on

Grey Ghost
She started to cry
Her nights getting shorter
Mary’s daughter
Fell in the water
And now she is gone

Brave hearts
How far must you fall
Pulled out from the danger
Help me stranger
Dog in the manger
And under the sun

Is the fate of man in the hands of God
The reason ashes rise
And it’s only love that never dies
And it’s living on
And if there is a message for the world
It’s still a mystery
And the fools are writing history
And the damage is done

So sad
This story is told
Hand down to the children
Tiny fingers
Melody lingers
And then she is gone

 

(Copyright: Barry Gibb, Ashley Gibb, Stephen Gibb; Reproduced here by permission)

悲しい物語を語り終えた灰色の幽霊は去っていきましたが、小さな指のイメージとメロディは空中に残り、人の心に訴え続けます。忘れてはならない、目をそむけてはならないと、私たちに告げるように。

「マリア」と訳した人名は「Mary」ですが、祈るような雰囲気の曲なので宗教的なイメージを加えたくて敢えて「マリア」といたしました。

歌詞の転載を許可してくれたバリー、スティーブン、アシュリー・ギブに感謝します。

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