【DVDレビュー】ビー・ジーズ『One For All Live in Australia』

『The Bee Gees One For All Live In Australia』のトレーラー

 

アメリカの音楽情報サイトaxs.com(2018年1月31日付)に掲載されたOne for All Tour Live in Australia 1989 [ブルーレイ/DVD] [輸入盤]絶賛レビューを簡単にまとめてご紹介します。

ビー・ジーズはまたも輝く――1989年のメルボルン・コンサートのDVD
40歳以上の人なら、ビー・ジーズが世界制覇していた時代をご記憶だろう。オーストラリア/イギリス出身の彼らは半世紀にわたるキャリアを誇り、流行や聴き手の好みが移り変わるなか、記憶に残るヒットをいくつも飛ばしてみせた。60年代末に、優れた歌唱力を誇る兄弟トリオとして頭角を現した彼らは、R&Bのアイコンへと変身を遂げ、映画『サタデー・ナイト・フィーバー』サントラの大ヒットに乗って70年代のダンスミュージック・シーンを席巻したのだった。
ビー・ジーズが好きでも嫌いでも、ポップカルチャーに彼らが及ぼした(そして今も及ぼしている)影響の大きさは否定できない。
悲しいことにギブ4兄弟のうち3人までもがすでにこの世を去った。80年代から2000年代にかけて、時の流れの中でビーチ・ボーイズ(デニスとカール・ウィルソン)、ビートルズ(ジョン・レノン、ジョージ・ハリソン)のメンバーが欠けていったが、同じことがビー・ジーズにも起こった。末弟のアンディ(「シャドー・ダンシング」)は長年の薬物乱用が心臓疾患に拍車をかけて、1988年に逝去。二卵性双生児のモーリスとロビンは2003年と2012年にそれぞれ亡くなり、ライオンにも似た風貌の(メインのソングライターでもある)長兄バリーがただひとり残った。

ビー・ジーズのこれまでのレコード・レーベルも、現在のレコード・レーベルも、とにかくヒット曲のコンピレーション・アルバムを出し続けることからも、彼らのレガシーが愛され続けていることがわかる。とにかく、めちゃめちゃキャッチーな曲を(どんどこ)作ったグループである。マルチプラチナ級の売り上げを誇る宝の山のようなLPやCD。その中でもひときわ光り輝く曲は、いつの時代にも現役感を再獲得してみせる(というか、実際にはビー・ジーズが「流行の先端」から外れたことなどないんじゃなかろうか)。「過去の遺物」と言われたってなんだって、ビー・ジーズの音楽は、文字通りの意味でも比喩的な意味でも、「金になる」のである。

それでも、ディスコの凋落に伴ってビー・ジーズに向けられた冷笑が、彼らががっちり握っていたポップ・ミュージックの覇権を弱らせたことも確かだ。別に何もかもビー・ジーズのせいだったわけでもないのに、である。バリーが滑らかなファルセットを聴かせだしたとき、流行はすでにそこにあった。彼はそれに乗ったに過ぎない。80年代はじめにラジオがビー・ジーズに背を向けるようになると、弟たちがフィーバーの後遺症から立ち直る間に、バリーは今度は他のアーティストに一連のナンバーワン・ソングを提供していた(バーブラの「ギルティ」などがそれだ)。

80年代末には、ビー・ジーズは洗練されたシンセサイザー主体のサウンドを引っさげて、『ESP』『One』などのメロディアスなアルバムで(より落ち着いた形での)成功を達成し続けた。さらに1997年には『Still Waters』、2000年代には『This Is Where I Came In』とニューアルバムを発表するたびに、いつもビー・ジーズはかえり咲いてきた。しかしモーリスの死によってビー・ジーズのスタジオ・キャリアは終わりを告げた。

 

しかし幸いにも、アナログ・レコードやテープ、(それにいまやデジタル)等のフォーマットでビー・ジーズの音楽は尽きることを知らない。今は新世代のファンが無数のベスト盤やボックス・セット(『Ultimate』『Mythology』『Timeless』)、それにビデオ映像(『One Night Only』で、美しいハーモニーやたまらないリズムを堪能できる時代だ。

イーグル・ロックから出たニュー・ミックス、リマスター版のこの『One For All Tour』DVD/ブルーレイも、長年のファンにも、新しいファンにも、楽しめるものになっている。アルバム『One』のための(10年ぶりの)ツアーで3番目に訪れたオーストラリア、メルボルンで収録されたこのコンサートのブルーレイ/DVD版は、ロックでもっとも名高いファミリー・バンドが今一度上昇気流に乗る瞬間をめくるめく映像でとらえている。ディレクターであるエイドリアン・ウッズのカメラは、1989年、ナショナル・テニス・センターで行われた満員御礼のコンサートで、黒いシャツにブルージーンズ姿のギブ兄弟が、新曲を披露し、懐かしい曲を歌う姿を追いかける。

ロビンとバリーは「オーディナリー・ライヴズ」と「ギヴィング・アップ・ザ・ゴースト」でリード・ヴォーカルをシェアし、モーリスはステージ右手、Yamahaのキーボード(A-HAと読めるように手を加えてある)のところに位置している。熱くほとばしる「ラヴ・サムバディ」、ゴスペル風の「獄中の手紙」と60年代の曲が続いたあとには、アルバム『One』のタイトル・トラック、さらには心地よく興奮をそそる新曲「トーキョー・ナイツ」。

ロビンのソロ・ヒット「ジュリエット」は、バリーの十八番「ワーズ」(この曲のエンディングには観客も参加する)やアコースティックの「ニューヨーク炭鉱の悲劇」と並べてもしっくる来る。続くアンプラグドのメドレーでは3兄弟が1本のマイクを囲んで「ホリデイ」「失われた愛の世界」、さらに「アイランズ・イン・ザ・ストリーム」と「ハートブレイカー」(どちらもバリーがディオンヌ・ワーウィックとドリー・パートンのために書いた曲)のマッシュアップを披露。DNAに刻まれた絶妙のハーモニーがもっとも決まる瞬間だ。

「イッツ・マイ・ネイバーフード」「ハウス・オブ・シェイム」など比較的後期の作品もある中で、オーストラリアの観客をもっとも熱狂させたのは「スピックス・アンド・スペックス」「ロンリー・デイ」「愛はきらめきの中に」「マサチューセッツ」などの懐かしい曲の数々だ。ブルーのアコースティック・ギターをかき鳴らすバリー。キーボードとクールなリッケンバッカーの六弦ギターを操るモーリス。片耳にヘッドフォンをあててはミキシングを確認するロビン。
リード・ギタリストふたり(アラン・ケンドールとティム・キャンスフィールド)、キーボーディストふたり(ヴィック・マーティンとゲイリー・モバーリー)、見事な指さばきのベーシスト(ジョージ・“チョコレート”・ペリー)、きっちりとしたドラマー(マイケル・マーフィー)、さらにエネルギッシュな女性ボーカリストのトリオを要したバックバンドも素晴らしい
フィナーレは「ステイン・アライヴ」「ブロードウェイの夜」「ジャイヴ・トーキン」。そしてアンコールはエレガント(かつエネルギッシュ)な「ユー・ウィン・アゲイン」だった。

 ― ピーター・ロッシュ

とても好意的なレビューです。ビー・ジーズのレガシーが「数々のヒット」だったり、この辺の曲がみんなバリーだけの作品みたいに書いてあったり、コンピレーション(ベスト盤)がどんどん出るのが喜ばしいことのように書いてあったり(まあ出ないよりは良いでしょうが、オリジナル盤がきちんと出回らない状況はなんとかならないものか…)、納得できないこともありますが、円熟期のビー・ジーズの数少ないほぼフルのコンサート映像が良い形で再び取り上げられ、評価されるのは、本当に嬉しいことですね。

その他のレビューもいくつか、追ってご紹介したいと思います。

{Bee Gees Days}

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